ちょっとは学習している
「今日は、ちょっと退屈、だった」
「だな」
日が暮れてきたため、この日の狩りは終了。
ありがたいことに吹雪にはならず、日が暮れるまでずっと狩りに集中することが出来た。
ただ、セルシアの言葉通り退屈……というより、物足りなさを感じた。
「でも、雪の上で動く感覚はる程度つかめた。それを得ただけでも、一日目としては上出来だと」
「それは、そうかも」
全く経験がないという訳ではないが、それでもその感覚は完全に忘れていた。
注意していても滑ることがある。
その可能性を考えると、ヘイルタイガーやアイスドラゴンとの戦いはかなり注意した方が良いな。
「前衛組は大変ね」
「……前衛じゃないのに、何度か転びかけてなかったか?」
「うるさいわね! 仕方ないでしょ。それに、それはあんたも同じでしょ!!」
「まぁな」
それはそうなんだけど、氷魔法をメインに使うお前があれだけ転びそうになるのは予想外だろ。
いや……氷と雪の上を歩く感覚は違うか?
まぁ、イーリスが思いっきり転んだのは面白かったけど。
「あんた……何笑ってんのよ」
「イーリスが思いっきり転んだのは面白かったなと思ってな」
「っ!? いらない事思い出してんじゃないわよ!!!」
おっと、つい本音が零れてしまった。
でも、あれだけ顔面から思いっきり転んだらな……仕方ないだろ。
「確かに、面白かった、かも」
「ちょっとセルシア!」
「落ち着けって、イーリス。食事の席だぞ」
「っ~~~~~、あんたのせいでしょ」
酒場とか、大衆が使う店なら食事中に大きな声を出しても問題無いが、今食事を取っている店は宿に付属されている高級食堂?
なので、喋りながら食事をしている者はいれど、大声を出す者はいない。
「ラガス坊ちゃま、あまり虐めてはなりませんよ」
「別には虐めてはいないぞ。本音が零れてしまっただけだ」
それに、小さく笑ってしまったのがバレたら、どうせ追及される。
だから隠すことなく伝えたんだ。
「あんたねぇ……はぁ~~~」
おっ、どうやら学習したみたいだな。
これ以上俺に咬みつけば、おそらくラージュさんの注意が入る。
それを理解したのかどうかは本人にしか分からないが、一先ず学んだみたいだな。
「悪かったって……でも、目的なモンスターを倒すとなれば、思いっきり転んでしまう可能性は俺たちにもあるからな……気を付けないとな」
今日戦ったモンスターは、正直考え事しながらでも戦える程度の相手。
しかし、標的であるヘイルタイガーやアイスドラゴンが相手となれば、あまり余計なことを考えている余裕はない。
それにもっとせわしなく動かなければならない。
それを考えると、今日のイーリスみたいに顔面から転ぶ可能性がある。
雪の上だから頭から転んでもダメージは殆どないんだけど、その隙を突かれるのが怖い。
俺は攻撃力があっても防御力はあまりないからな。
「相手は当然雪の上での戦いに慣れてる。その状況を考えると、厄介な相手っすね」
「そうだな……まっ、数では有利なんだ。上手く戦える筈だ」
一応ヘイルタイガーかアイスドラゴンと遭遇した時、どう戦うかはある程度決めている。
後は……予想外の事態が起きたとき、上手く対処するしかない。
なんとかなるだろうと思いながら翌日になり、本日も狩りに勤しむ。
本当なら一日空ける。
もしくは野営しながら目的のモンスターを探すのが良いんだろうけど、環境が環境だからな。
まだ泊りがけは遠慮したい。
後、一応リザード公爵様からの依頼だけで冬休みを潰したくない。
なので連日探索を続け、少しでも早く終わらせて魔靴の制作に時間を使いたい。
「……ようやく、面白そうなモンスターが登場したな」
戦い甲斐があるモンスターと遭遇したいと思っていたら、Cランクのスノーベアーと遭遇。
数は三体……早い者勝ちだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます