吹雪になる前に少しでも
ホーンラビットっぽいけど……毛の色が普通のホーンラビットと違う。
ちょっと青い、か?
「スノーホーンラビットですね」
「氷属性のホーンラビットということですね」
ルーノさんが目の前のホーンラビットの正体を教えてくれたお陰で、何故毛が少々青いのか解った。
後……普通のホーンラビットと比べて、体が大きいな。
そりゃレベル差で少しは大きさが変わるが……って、気にしてる場合じゃないか。
「ラガス坊ちゃま」
「分かってる」
スノーホーンラビットが完全に俺たちを敵と認識した。
ルーノさんたちが前に出ようとするが、それを手で制して一歩前に出る。
やることはいつもと変わらない。
目標をスノーホーンラビットの額にロックオンし、魔弾で打ち抜くだけ。
打ち抜くといっても、脳を潰す程度。
うっかり体を貫かない様に威力は調整している。
「キュっ!? ……」
「動きは少し速かったけど、こんなものだよな」
特に何かを期待していた訳ではない。
魔弾に回転や貫通などの効果を付与せずとも、あっさり倒せることが分かった。
とはいえ……思ってたよりも、脚力と防御力が高いな。
もう少し威力が弱かったら、頭蓋骨を砕くだけに留まったかもしれない。
まぁ、頭蓋骨が砕かれたらそれはそれで超激痛だろうから、痛みでショック死するかもしれないけどな。
「お見事です」
「相手が相手だからな……ただ、やっぱりちょっと大きいな」
解体する前に、持ち上げて見て……より顕著にその差を感じた。
「雪原に生息するモンスターは、他の地域に生息するモンスターより、体が大きく育つようですよ」
「そうなんですか?」
ルーノさんは物知りだな。
しかし、雪原で過ごすモンスターの方が、他の地域で生息するモンスターより体が大きくなる、か……あっ、確かベルクマンの法則ってやつか?
確か寒い地域で生息する動物の体は、大きくなる傾向がある……だっけ?
あんまり詳しいことは覚えてないけど、この世界でもその法則が適用されてるのかもな。
「さて、解体……は、ハンターギルドに任せるか」
「この場で解体せずともよろしいのですか?」
「解体してる間に、雪が降ってくるかもしれないだろ」
今のところ雪は降っていないが、さすがに俺も天気の流れは読めない。
軽く雪が降る程度なら問題無いけど、吹雪とかになると……探索出来ないことはないけど、俺以外のメンバーがヤバい。
ルーフェイスは問題無いとして、さすがにシュラやメリルでも吹雪の中で探索はちょっと厳しいだろ。
セルシアも無理と思う。
イーリスは絶対に無理だろうし、そうなれば俺とルーフェイスだけで探索することになる……まっ、別にそれでも良いんだけどさ。
とにかく、今は少しでも探索してモンスターと遭遇する時間が欲しい。
「そうですか。分かりました」
スノーホーンラビットを亜空間に入れ、再び雪原での探索を開始。
雪の上を歩く感覚には少し慣れたが……探索を初めて一時間近く経ったが、最初のスノーホーンラビット以外、俺にとって珍しいモンスターと遭遇しない。
いや、ゴブリンやコボルト、ボア系のモンスターも平均的なサイズと比べて、体が少し大きいなとは感じた。
その分少々身体能力は上がってるけど……正直、俺にとっては微々たる差。
「はぁ~~~……」
「なに辛気臭い面してるのよ」
「すまんすまん。ただ、思ったより出現するモンスターのレベルが低いなと思ってな」
「……あんた、頭おかしいんじゃないの」
おっと、痛いところ突くじゃないか。
俺としては普通の行いであっても、一般的に考えてあり得ない行動を何度も行ってきた自覚はある。
ただ、思ったよりモンスターのレベルが低いと感じたのは事実だ。
なので……俺の頭はいたって正常。
「いきなり失礼だな。心の底からの本音だ」
「……やっぱりおかしいわよ」
「お前、俺のことおかしいおかしいって言うけど、それならセルシアまで頭おかしいって言ってるのと同じだからな」
「なんでそうなるのよ!!」
なんでって……セルシアだって、俺と同じく今のところつまらないって同じ感想を持ってるからだよ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます