貴重なバトル経験

道中の休憩時間、馬車の中に居て体を動かしてなかったので、シュラに体を動かす相手になってもらった。


道中ではモンスターに襲われることはあったらしいが、それでも全く強くないモンスターだったらしく、シュラにとっては願ったり叶ったりといった様子。


というわけで、いつも通り強化系のアビリティや魔力の使用せず、数分ほど模擬戦を行う。


「ラガス様、良ければ私とも行いませんか」


武器を変えながら何回かシュラと模擬戦を行ったところで、ルーノさんが自分と模擬戦をしませんかと声を掛けてくれた。


「是非、お願いします」


普段の交友関係以外の人と戦う機会は少ない。

なので、お言葉に甘えてさせてもらう。


ルーノさんはロングソードと長槍を使う様なので、とりあえずその二つとも体験してみることにした。


そして当たり前というかなんというか、剣技や槍技の腕に関しては及ばない。

受け流して体勢を崩そうとしても、上手く押されて失敗。


シュラとの模擬戦通り、魔力もアビリティも使ってないので全力を出せば結果は分からないが、純粋な武器の技術だけだと、完全に俺の負け。

身体能力に関してはどうかな? って部分はあるけど……今回の勝負は、俺の負けだ。


「いや~~、やっぱり強いですね」


「それはこちらのセリフです。ラガス様は魔弾に体技、剣技をメインに戦うと聞いていましたが、槍技も中々のものです。正直、本当に驚かされました」


ルーノさんと模擬戦を行う時、当然俺も槍を使った。

技量的には、ロングソードと短剣の次に上手く使えると思ってたが、まだまだと思い知らされた。


「本当ですか。趣味の延長みたいなものなんですけど、やっぱり褒められると嬉しいですね」


「しゅ、趣味ですか……本当に驚かされますね」


趣味で振り回してるからこそ、意外に伸びたかもしれないんですけどね。


昼の休憩が終わり、夜の休息時間になると……今度はリタさんが模擬戦に誘ってくれた。


「ラガス様。私と少し体を動かしませんか」


「よろこんで」


聞こえ方によっては大人な誘い言葉に聞こえるかもしれないが、当然模擬戦のお誘い。


リタさんは基本的にナックルを装備して肉弾戦で戦い、時には大盾で敵の攻撃をガードする。

ルールは同じく魔力やアビリティなしで、素手で勝負。


割とシュラにファイトスタイルが似てると感じた。

勿論、しっかりとした技術はあるが、それよりも力で押すイメージが強い。


ただ……本当に力が強いので、そのファイトスタイルが確かに合ってる。

正直なところ、あまりリタさんの攻撃はシュラと同じく、ガードはしたくない。


なるべく避けながら反撃しようとすると、避ける方向を読んだ攻撃が飛んでくる。


うん、非常に恐ろしい。

ここら辺の動きというか読みはシュラより上だなと感じた。


しかし、こっちにも秘策はある。


「ッ!? ……今のは、なんですか?」


「力の受け流しを利用した技……って感じです」


合気道と言っても、内容が伝わる訳がない。

てか、ぶっちゃけ合気道なのかもよく分らない。


とにかく、相手の力の動きを利用して……更にそこに自分の力を加えて投げた。


ルーノさんには技術の差で負けてしまったけど、とりあえずリタさんには勝てた。

まぁ、それを警戒されてから全勝とはいかなかったけどな。


「ありがとうございました。先程の投げ、お見事でした」


「リタさんの読みも凄かったです。後、本当に一撃一撃が重いなと感じました」


いや、マジで何度か防ぐはめになったけど、本当に重かった。

そして改めて俺は防御力が低いなと感じたな。


一応吹っ飛ばされはしなかったけど、無茶苦茶押された。

受け流しが無理ではないけど、パワーだけじゃなくてスピードもあるから、タイミングが合わないと上手く受け流せない。


スピードがあるフルコンタクト空手? って感じだったな……楽しい時間ではあったんだが、イーリスから闇深い視線を向けられてた気がする……気のせいじゃないよな?

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