あんまり動かないでほしい

「って感じでしたね」


「なるほど……再生力が高いモンスターは厄介な相手だと聞きますが、ラガスさんがそこまで言うなら本当に厄介なんですね」


俺がラージュさんに三本角のオーガジェネラルとの戦闘談を話している最中、イーリスはずっと不機嫌なままだった。


ここまで自分の感情を隠さないってのも、ある意味凄いと思ってしまった。

普通、貴族なら相手に悪い印象を与える感情は隠すと思うんだが……俺のこと嫌いオーラが一ミリも隠れていない。


ちなみに、セルシアは俺の話を楽しそうに聞いていた。


「私も、戦ってみたかった」


「セルシアらしいな。まぁ、でも……一対一で戦うのはお勧めしないよ」


単純に身体能力が高いってのもあるけど、扱う火が普通の火とは違う。

シュラが使う鬼火とも違って、燃やすよりも溶かすことに特化してる……そんな感じの火だった。


勿論、再生力が高いのも厄介な点だけど、そこに関してはセルシアが紫電崩牙を使えば解決しそうではある。


「あなたは一人で戦ったのに、セルシアにはそう言うのね」


おっと、旅が始まって初めて話しかけてきたな。

俺に文句があるからってのが理由っぽいけど。


「自分で言うのはあれだけど、俺はセルシアより強いからな。属性魔法が使えなくても、手札はそれなりに多い」


結局使わなかったけど、ランクが高い武器も持ってるしな。

セルシアもいずれは一人で倒せるぐらい強くなると思うけど、さすがに今は厳しい。


今、三本角のオーガジェネラルと渡り合える点は、紫電崩牙を装備した状態での攻撃力だけだからな。


「俺の従者であるシュラとメリルも一緒にパーティーを組むなら、倒せる可能性はそれなりにありそうだけど……やっぱり、まだお勧めしないかな」


「持っている力だけなら、Aランクにも届く存在……私やリースたち三年生がパーティーを組んでも、倒すのは無理でしょう」


冷静な考えだ。

確かにラージュさんとリースさん、他の学園のトップは学生を越えた力を持ってるけど、トップたちが集まっても……うん、ほぼほぼ負けるのは確実だと思う。


「そうですか……」


分かってたけど、ラージュさんの言葉には素直に従うんだな。


けど、何か目の奥が燃えている様な……もしかして、自分なら三本角のオーガジェネラルに良い一撃を与えられるとか思ってるのか?


そりゃイーリスのアサルトタイガーファングは強力だと思う。

ぶっ壊した俺が言えば嫌味かもしれないけど、あの一撃ならそこそこのダメージを与えられると思う。


ただ……それは上手く当てられたらの話だ。


「ですが、そういった強敵を倒せるラガス君に大会で他の従者を従者を圧倒し、優勝したお二人がいれば目的のモンスターも倒せるでしょう」


「動き慣れない場所なので、簡単にはいかないと思いますが、おそらく大丈夫かと」


セルシアもルーフェイスもいるし、攻撃力も数も問題無い。


だから……ぶっちゃけ、イーリスには参加してほしくない。

色々と合わないから、嫌われてるからとかが理由じゃなくて……どう考えてもウィルキリアの周辺に生息しているモンスターとは、相性が悪い。


リザード公爵様が魔靴の素材として望む物は、ヘイルタイガーがアイスドラゴンの牙か爪。

どっちも氷属性のモンスターだ。


ポ〇モンじゃないけど、この世界でも属性による相性は戦闘において大事。


そりゃ、少しぐらい物理的な攻撃力は期待できると思うが、属性的なダメージは全くもって期待できない。


アイスドラゴンに至っては、アサルトタイガーファングを使っても、物理的なダメージが期待出来るかどうか……申し訳ないが、イーリスはウィルキリアの宿で待機しててほしいな。


絶対にブチ切れそうだから、そんな提案しないけども。


ただ……なるべく大人しくしててほしい。

動くにしても、従者のルーノさんとリタさんが直ぐにカバーできる程度でお願いしたいものだ。

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