感情を隠してる?

冬休みまではこれといった問題はなく、メリルから怒られない程度の準備品を買い込み、着々とウィルキリアで活動する準備を進めていた。


そして、冬休みに入れば夏休みと同じく実家に帰る生徒が多い。

冬は当然雪が降りやすく、家に帰るまで困難かもしれないが……そこは貴族パワーで何とかしてしまうらしい。


そんな中、俺たちはというと……冬休みに入った日の朝、予定通りにイーリス……と、ラージュさんが訪ねてきた。


「おはよう。目的が終わるまでよろしく頼むよ」


「……よろしく」


おっ、一応返事はしてくれるんだな。

また憎まれ口が飛んでくるのかと思ったけど……リザード公爵様に、そこら辺を注意されたのか?


「あまり関係無い立場ではあるが、お邪魔させてもらいます。よろしくお願いします」


「いえいえ、こちらこそよろしくお願いします」


確かに、ラージュさんはそこまで関係無い立場かもしれないけど、多分イーリスがあまり俺と衝突しない様に、リザード公爵様から同行を頼まれたのかもな。


「おはよう、イーリス」


「おはよう! セルシア!!!」


ん~~……まるで花が咲いたかのような笑顔だな。

セルシアも、若干嬉しそうではある。


まっ、その対応の差は解かり切ってるから、特に文句はないんだけどさ。


対応の差に仕方ないと思っていると、イーリスの従者らしき二人が一歩前に出てきた。


「ラガス様、これからの旅で護衛として参加させていただきます、ルーノと申します。よろしくお願いします」


「同じく、リタです。よろしくお願いします!!」


「どうも、こちらこそよろしくお願いします」


リザード公爵様は良い人たちを護衛に用意してくれたな。


赤髪マッシュのイケメン騎士……これまた絶対モテる顔だ。

俺のことをどう思ってるかは知らないけど、とりあえず今のところ好印象。


そんで、うす緑髪のポニーテール騎士さんのビジュアルも、やはり高い。

こちらも相当強いんだろうけど、なんというか……ちょっと無理矢理元気を出してる気がするんだが……気のせいか?


まっ、思いっきり喧嘩売ってるみたいな雰囲気はないし、別に警戒する必要はないか。


「それでは、参りましょうか」


俺とセルシア、イーリスとラージュさんはリザード公爵様が用意してくれた場所に乗り込み、メリルたちは場所の外で周囲を警戒しながら向かう。


「……」


「……」


「……」


「……」


馬車の中は空間魔法が使われていて、外見よりかなり広くなっている。


だが、全員何も喋らないので、その広さが逆に息苦しく感じる。


「そういえば、ラガス君はこの前授業中に起こった事件で、オーガジェネラルと戦ったそうですね」


「はい、そうですね。急にオーガの群れが押し寄せてきて、結果的にオーガの群れとボスであるオーガジェネラルと戦うことになりました」


ぶっちゃけ、あれは早めに気付けて良かったと思ってる。

気付けてなかったら、さすがに生徒全員が無事だったかどうか……かなり危険な状況になってたのは間違いない。


ハンターがやらかしたが、違うハンターが早めに気付いて報告してくれて、俺たちやアルガンツ先生たちが前に出て、なんとか対処出来た。


「そのオーガジェネラルは三本の角を持つ、特殊な個体と聞きましたが……その強さはいかがなものでしたか?」


「……一応、一人でそいつとは戦ったんですけど、普通に考えて一人で戦う様なモンスターじゃないなかったですね」


おい、イーリス。

その絶対にあり得ない、みたいな顔はなんだ。


それなりに苦労したが、ルーフェイスとアルガンツ先生の力を借りずに一人で倒したんだぞ。


どうせ口に出したら怒られると思って、心の中で俺のことボロカスに言ってるんだろうな。

そんなイーリスの態度を無視し、質問してきたラージュさんに三本角のオーガジェネラルが、いかに強かったかを全て伝えた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る