黙って待てるわけがない
SIDE セルシアたち
「お、おい。行っちまったけど、良いのか!?」
「えぇ、大丈夫です。冒険者さんは、私たちの戦いを見ていたのですよね」
「お、おぅ」
「であれば、分るでしょう。私たちの中でも、ラガス坊ちゃまが飛び抜けて強いことを」
確かに男はラガスがCランクのヴェノムスネークを一人で倒す光景を見ていた。
学生がCランクのモンスターをソロで倒すなんて、普通に考えればあり得ないが……ラガスは危なげなくそれを達成した。
「そ、そりゃ見てたけどよ……でも、万が一ってことがあるだろ。幸いにも、オーガ達がこっち来るまで時間はあったんだぞ」
「……そうかもしれませんが、ラガス坊ちゃまはその万が一を考えられる方です。それに、傍にはルーフェイスもいます」
「ルーフェイスって、あのブラックウルフのことか」
「そうです……ルーフェイスはまだ子供ですが、非常に優秀です。ラガス様の力を考えれば、集団戦は寧ろ望むところでしょう」
正体は狼竜なので、本気になればオーガを相手にする事は難しくない。
加えて、その脚力を活かせばラガスのサポートも行える。
「メリルの、言う通り。ラガスは、とんでもなく、強い。一人でじゃ、ないけど……Bランクのモンスターも、倒したことが、ある」
「…………おいおい、マジか。最近の学生はどうなってるんだよ」
セルシアの表情から、嘘を言っていないのは解る。
男も偶々運良く……いや、運悪くBランクモンスターとの戦いに参加したことがある。
だからこそ、Cランク以上のモンスターが持つ恐ろしさを身をもって知っている。
「はは、まぁそう思いますよね。でも……僕たちの世代では、ラガスと……後、セルシアさんだけが飛び抜けて凄いんですよ。あっ、後リーベという学生も凄いらしいですね」
「はぁ……それが事実だとしたら、お前らの先輩として自信無くすぜ」
自分はそのヤバい世代の中に入ってないと答えるロックスだが、戦いぶりを見ていた男としては、ロックスも十分に学生という枠からはみ出た化け物だった。
(こりゃ不味いというか、若干首が飛ぶのではと思ってたが……案外なんとかなるかもな)
そうこうしている間に、セルシアたちは教師と生徒たちが集まっている場所へと到着。
「セルシアたちも来たか……ん? ラガスはどうしたんだ?」
「ラガスは、先に行きました」
「ッ!!?? それは本当か!!」
「えぇ、ラガス坊ちゃまは一足先にオーガの群れへと向かいました」
セルシアとメリルの言葉に、この場所にいる殆どの者があり得ない……バカ過ぎるという思いを表情に零していた。
「はぁ~~~~~……メリル、君は止める立場ではないのか?」
「勿論そう思いました、従者ので……ですが、私が止めたところで、こういった場面では絶対に止まりませんので」
一人、なんとなくメリルの気持ちが理解出来る者が一歩前に出た。
「アルガンツ先生、早く行きましょう」
「リーベ……確かに実力がある生徒の手は借りたいが、良いのか?」
「えぇ、問題ありません。俺は……ラガスのお陰でここまで強くなれました。なのに……あいつが戦ってる状況で、指をくわえて待ってるだけなんて、絶対にできません」
少し前までアイアンアントと戦い、演習の最終日ということもあって動くのが辛くなるのが普通だが……今のリーベからはそんな様子を微塵も感じさせない闘志が溢れていた。
「流石ですね、リーベ様。ラガス坊ちゃまから、リーベ様にその気があるのであれば、私たちと行動を共にして欲しいと伝言を受け取っています」
「……有難い提案だ」
既にセルシアとロックスもオーガの討伐戦に参加するというのが、会話の内容から伝わり……元気で勇敢すぎる生徒たちを見てもう一度、アルガンツは大きくため息を吐いた。
「アルガンツ、この子たちは大丈夫だろう」
「バレント……私としては、生徒の安全を第一なのだが……とは言っても、その生徒が既に参加していることを考えれば、もう悩むのは無駄か」
「そういうことだ」
教師陣の考えも固まり、そこからは誰が生徒たちをモンスターから守るために残り、誰がオーガの討伐に参加するのかが迅速に決められる……アルガンツたちは全力ダッシュでオーガたちの元へ向かった。
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