お先に暴れる

「な、なんでオーガなんですか?」


セルシアたちや他の生徒たちを襲ったアイアンアントと、その親玉じゃなくて……なんでオーガ???

全く持って意味が分からない。


「そこは俺にも分からない。だが、オーガの大群がこちらに向かっている」


「オーガの大群ですか……それは中々の戦力ですね」


「そうだな……大群ってことは、数は二十や三十……もしかして、それよりも上ですか?」


「……おそらく、五十は超えている筈だ」


おいおいおい、マジか……五十はさすがにヤバいだろ。

この辺りにいるオーガ全員が一か所に集まってたのか?


それなら分る……いや、だとしてもなんで今、その大群がいきなり動き出したんだ?


「…………分かりました。とりあえず半端じゃない数のオーガこっちに向かって来ているんですね」


「あぁ、既に教師たちにも伝わっている筈だ……それで、まだ学生である君達に恥を忍んで頼む。どうか、力を貸してほしい」


この人……良い人というか、嘘は付かない真っすぐな人だな。

まぁ、ここ数日俺たちの戦いぶりを見ていたからかもしれないけど。


「勿論です。将来ハンターを目指す身として、戦いに参加します」


「私も、勿論」


「そうだね……ラガスの言う通り、ここは退けないところだ」


「……はぁ~~~~~。私の立場を考えれば止めなければならないのでしょうけど、そうも言ってられませんし、仕方ありませんね」


「ワゥ!!!」


さすがメリル、話が解るな。


「それじゃ、俺は一足先に言って暴れてきます。メリル、ロックス、メリルはリーベとチームを組んでくれ。あいつならオーガ相手でも十分な戦力になる筈だ。ルーフェイスは付いてきてくれ!!!!」


『分かった!!!』


「ラガス坊ちゃま、ご武運を!!」


「おう!!! メリル、存分に暴れて良いからな!」


「……かしこまりました」


相手が大群となれば、メリルの毒と糸が最高に力を発揮する筈だ。


それじゃ……暴れて数を減らすか!!!!


「ラビットフット」


短期決戦で倒せればいいんだけど、絶対に俺とルーフェイスだけじゃ全てを倒し切るのは……不可能じゃないかもしれないけど、絶対に後ろに漏らしてしまう。


『五十を超えるオーガの群れなんて、初めてだね!!!!』


「あぁ、確かに初めてだな……いやはや、まさかこんなことになるとはな」


そりゃもしかしたら、モンスターの群れに遭遇するかもしれないとはちょっと思ってたよ。


でも、それはせいぜいEランクかDランクの群れであって……まさかCランクのモンスターが群れで、しかも五十以上の数とか一ミリも考えてなかったぞ。


にしても、本当になんでオーガの群れなんだ?

そんなのが発見されてたら、そもそも演習場所として選ばれないだろうし……もしかして、偶々見つけたハンターたちがちょっかいを出したのか?


そんで、怒り狂ったオーガがそのままこっちに向かってきた……って感じ?

でも……ハンターが殺されたって話はなかったし……いや、本当に謎だな。


『ラガス、後少しだよ』


「分かった。ルーフェイスは俺からあまり離れすぎない程度に暴れてくれ」


『了解!!!!! あっ、あんまり傷付けない方が良い?』


ん~~~~~……一応オーガだし、数も多いから万が一ってのを考えると……うん、今日は放っておいて良いな。


「今回は別に気にしなくて良いぞ。好きなように切り裂いちゃってくれ」


『よ~~~~~し、やってやるぞ~~~』


既に狼竜の姿になってるし……あんまり心配しなくても大丈夫かな。


ただ、五十以上の群れってことは、どう考えても纏め役の個体がいるよな。

普通の上位種じゃなくてジェネラルか、キングか……キングだと、あんまり悠長にしてられないな。


ジェネラルはBランクであり、その上のキングはAランクの力を持つ強敵。

ルーフェイスと二人だけでは……なんとかなるか?


いや、どちらにしろ厳しいことに変わりはないだろうな。

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