何故に?

「よっと」


演習三日目の昼前、本日もラガスたちは特に大きな怪我を負うことなくモンスター戦い続け、順調にポイントを稼いでいた。


「アイアンアント……やっぱりここら辺に現れるのは珍しいね」


「やっぱりそうだよな」


ラージアントなどであれば、森の中にいても珍しくはない。

だが、鋼の体を持つアイアンアントは主に鉱山の中で暮らしており、表に出てくる事は珍しい。


「……ダンジョンでも発生したか?」


「誰も気付かず、結果溢れ出したということか……いや、それはあり得ないんじゃないかな」


多数のモンスター、罠に宝箱が眠るダンジョン。


基本的に放っておいても問題はないが、あまりにも中の数が多くなると……例外的にダンジョン内に生息するモンスターが地上まで登ってくる可能性がある。


でも、ロックスにその可能性はないと否定された。


「ダンジョンが見つかれば、直ぐにギルドが管理する筈だし……ハンターなら、後から罰を食らうかもしれない過ちは起こさない筈」


「それもそうか……ダンジョンの存在を知っていながら、ギルドに報告しないとかバレたら降格か……最悪の事態になれば、処刑もありえそうだ」


過去にダンジョンから魔物が溢れたせいで村が幾つも潰され、街が破壊されたという記録も残っている。


故意に起こされたのか、それとも偶然起こったのか……それが分からないケースも多い。

元の世界の防犯カメラとかないからな。調べようがないんだろう。


「ラガスは、やっぱり、ダンジョンに興味、ある?」


「そりゃ勿論あるに決まってるだろ。将来はハンターになるんだし、ダンジョン攻略は一つの目標だ」


できれば、新しく生まれたダンジョンを一番最初に攻略したい。


とはいっても、あんまり階層数が少ないダンジョンだと……萎えるというか、気落ちというか……あんまり凄い結果ではないよな。


別に記録とか功績は気にしないけど……うん、やっぱり生まれたてのダンジョンを一番最初に攻略するなら、良い感じに深い階層のダンジョンが良いな。


「でも、そう考えると本当に謎なんだよね」


「…………あぁ、本当に謎だな」


「「「ッ!!」」」


三人とも気付いたみたいだな。

こっちに今さっき倒したアイアンアントが数体向かって来てる。


「まだ解体が終わってないから、頼んでも良いか」


「勿論です、ラガス坊ちゃま」


「解体に、集中、してて」


「安心して解体を続けて」


……頼りになるな~~~~。


他方面の警戒はルーフェイスがいるし、本当に解体だけに集中してても問題無いだろ。


なんて思ってたけど……ちょっとヤバい事態になってる。

俺やロックスたちに被害はなかったが、どうやら他の場所でもアイアンアントが多数発見された。


「ラガス、ちょっと多かった、よ」


「えぇ、セルシア様の言う通りですね」


「ははは、結構危なかったね。もっと堅い相手でもサッと切断できるようにならないと駄目だね」


「……確かに多かったみたいだな」


三人は合計、九匹のアイアンアントを連れてきた。


途中でおかしいと思ってバットエコロケーションを使ったけど、他の場所でも同じ足音が幾つも聞こえた。

アイアンアントはDランクの中でも防御力に特化っしてるし、リーベなら大丈夫だと思うけど……他の生徒たちだと危ないな。


いや、腕が立つハンターたちがいるんだし、そこら辺は大丈夫か。


でも………三日前から俺たちを見ててくれてるハンターの気配が消えてるような……あっ、戻ってきた。


「君たち……は、大丈夫か」


と思ったら、目の前に現れた。

つか、なんか疲れてるっぽいし……もしかして、本当にダンジョンからモンスターが溢れたのか?


「俺たちを見ててくれたハンターの方ですよね」


「っ! バレてたか……いや、今はそんな事どうでも良い」


ハンターは呼吸を整え、唾を飲み込み……かなり衝撃的な言葉を口にした。


「こっちに、オーガの集団が向かって来ているんだ」


「……え?」


な、何故にオーガ???

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る