そこは心配していない
セルシアの実家から王都に向かう途中、一度だけ盗賊に襲撃されたが、俺たちの出る幕は一切なく騎士たちが蹴散らした。
結局学園に到着するまでモンスターや盗賊と戦うことは一度もなく、無事に送り届けられた。
いや、別にそのことについて不満があるわけじゃないよ。
だってロウレット公爵家に仕える騎士たちは仕事を全うしただけ。
悪いことやミスは一つもしてない。
単に俺が我儘なだけってことだ。
騎士たちも俺やセルシアがそこら辺のモンスターと戦っても大丈夫なのは知ってるだろうけど、職的に戦わせる訳にはいかないもんな。
という訳で、無事に学園に到着してパートナー専用寮のベッドでその日はぐっすりと寝た。
そして翌日は朝食を食べてからいつもの様に鍛錬を…………ではなく、魔靴造りに励んでいた。
今のところドレッグさんたちから注文が入ってるから、五足分の魔靴を造らなければならない。
素材に関しては鉱山に向かった日、採掘する時間は削られたけどそれなりに使えるモンスターの素材はたくさん手に入った。
それに、五足分であれば元々持っていた鉱石と、ロウレット公爵領の鉱山で採掘した鉱石分でなんとかなる。
せっかく近衛騎士たちから制作依頼を受けたので、ロウレット公爵様やリーベと同じく精一杯最高の魔靴を造る。
既に脚のサイズは聞いているので、制作が途中でストップすることはない。
朝食を食べ終えてから昼間でぶっ通しで造り続け、部屋にメリルが入ってきたところで作業をストップ。
「ラガス坊ちゃま、昼食の準備が出来ました」
「おっ、そうか。今行くよ」
「……もしかして、休まずに朝からずっと造り続けていたのですか?」
「おう、勿論」
部屋から一歩も出てないし、メリルは知ってた……よな?
「もう少し休憩を挟みながら作業を行った方が良いかと思いますが」
「はは、心配してくれてありがとな。でも俺は一気に作業し続けた方が良いんだよ」
「そうですか……分かりました。しかし昼食の用意が出来ましたので、一度中断してくださいね」
「分かってる分かってる」
ここで後もう五分、もう十分って作業を続けたら絶対に雷が落ちる。
分かってて作業を続けるほど、俺も馬鹿じゃない。
下には全員待っており、みんなで昼食を食べ始める。
「ラガスさん、今日は全くトレーニングしないんすか?」
「ん~~~……後でちょっとぐらいは体を動かそうと思ってるけど、あまり動くつもりはないかな。これを食べ終えたら、ちょっと散歩に行こうと思ってるし」
一日中作業しっぱなしは確かに良くない。
かといって、庭でがっつり動き気分ではない。
体が鈍らない様に多少は動くけどな。
「……もしかして、一人で散歩したい、気分?」
「そ、そうだけど……良く分かったな、セルシア」
「パートナーだから、ね。それに、凄く、顔に出てた、よ」
顔に出てたか。
別に超疲れたりしてないと思うんだが……まぁ、パートナーだからと考えれば当然なのか。
「ラガス坊ちゃま、本当に一人で街に行くのですか?」
「あぁ、ちょっと気分的に一人で歩きたくてな」
「メリル、心配しなくてもラガスさんなら大丈夫だって。ラガスさんが誘拐されたり、なんて光景を想像できるか?」
お、良いこと言ってくれじゃないかシュラ。
心配してくれるのは嬉しいけど、メリルはちょっと過保護というか……心配し過ぎな部分はあるよな。
勿論、心配してくれるのは嬉しいんだけど。
「そんな事は全く心配していません。誘拐される云々よりも、ラガス坊ちゃまはかなり名が知られた存在となっていますので、面倒な件に絡まれない……もしくは首を突っ込まないかが心配なんです」
「な、なるほど……そこら辺が心配だったんだ。分かった、ちゃんと面倒な事件に巻き込まれずに帰ってくるから安心してくれ」
「…………分かりました。信用しますので、ちゃんと帰ってきてくださいね」
ちょっと間があったけど、信用してくれたならそれで良い。
相変わらず美味い昼食を食べ終え、いざ散歩へレッツゴー!!!
と、意気揚々と学園から出て歩き始めたんだが……散歩中にとある人物と出会った。
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