やらかしてないよな?

「ラガス君、今度は一緒に上手い酒でも呑もう」


「は、はは。そうですね。その日が来るのを楽しみにしてます」


ロウレット公爵様、あと数年はお酒を呑むつもりはありませんよ。


「ラガスさん、お元気で」


「また私たちと模擬戦してください」


「あぁ、勿論だ。強くなった二人と戦うのを楽しみにしてるよ」


これは本音だ。フォース君とリッシュちゃんはレアードとセリスに負けない力を秘めてる。

まだまだこれからが成長期だし、次に会う時は絶対に今よりも強くなってる筈だ。


「ラガス君、これからセルシア様のことをよろしくお願いいたします」


「はい。俺が迷惑かけてしまうこともあると思いますけど、精一杯守ります」


セルシア的にはいつも守られてばかりのお姫様になんて興味はないだろうけど、今はまだ俺の方が実力は上。

何が起きても、俺が必ず守る。


アリスタさんやロウレット公爵様と別れを済ませ、現在の拠点地である学園へと向かう。

こっちに来るまでは走ってきたが、ロウレット公爵様がタダで高級馬車と護衛の騎士たちを貸してくれた。


全く揺れず、尻が痛くない。

さすが公爵家が持つ馬車だと感じた。


道中、遭遇するモンスターは全て騎士たちが倒してしまうので暇ではあるが、偶にはのんびりと目的地に向かうのも悪くない。


そう思っていると……セルシアの実家に行って滞在するという重要な任務を終えたが、一つ疑問が生まれた。


「あ、あのさ、セルシア……セルシアのお母さんは外出してたのか?」


何故、屋敷にセルシアのお母さんがいなかったのか。

尋ねてから、もしかしてやらかしたか? と思った。


でもセルシアのお母さんが、既に亡くなっているという話は聞かない。

それに仮にそうなのであれば、ロウレット公爵様が二人だけで話した時にセルシアのパートナーである俺にそこら辺を伝えてくれる筈。


なので、セルシアのお母さんは死んでおらず、偶々屋敷にいなかっただけで……であると信じたい!!!。


「……そういえば、従者の人たち、から……えっと、少し離れた街で、強いモンスターが見つかったから、その討伐に参加してる……って、話を聞いた、よ」


「へっ? そ、そうだったのか」


「うん、そうらしい、よ。ちょっとびっくりした」


いや、俺の方がびっくりしたよ。

ちょっとどころじゃなくて、凄いびっくりさせられた。


セルシアのお母さんだから、物理的に強いのはある程度予測してたけど、まさか強いモンスターが出現したからその討伐に参加してるって……それは公爵家夫人の仕事なのか??


「ラガス様、セルシア様のお母様は元騎士団に所属していたのです」


「へぇ~~。そうなんですね。それなら、その強いモンスターも無事に倒せるか」


「おそらく、常識外れの強さ……もしくは厄介さを持つようなモンスターでなければ、問題無く倒せるでしょう。現役の頃は、男性騎士と模擬戦を行っても殆ど勝利を収めていたようです」


「それはそれは……まさに女傑、ですね」


キリアさんの説明を聞いて、ある程度セルシアのお母さんの姿が浮かんできた。

浮かんできたんだが……結構セルシアとは違うタイプに思えた。


……アホみたいな考えは捨てよう。


「お母さんは、本当に強い、よ。私も、まだまだ敵わない」


「話を聞いてるだけで強さが伝わってくるよ」


少し離れた街でヤバいモンスターが現れたって理由で、公爵夫人が自ら倒しに行くんだもんな……俺が言うと色々ツッコミが来そうだけど、普通に考えてあり得ない行動だよな。


多分一人で向かってはいないだろうけど……それでも圧倒的に常人ではない。


「ラガス坊ちゃま、驚いていらっしゃるようですがリアラ様も同じようなことをしていらっしゃいますよ」


「…………そういえばそうだったな」


今完全に忘れてたな。

わざわざ少し離れた街まで行ったりしないけど、体が鈍り過ぎないようにって偶に狩りに行ってたな。


セルシアのお母さんだけが例外じゃなかったな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る