万分の一の確率でパートナーが見つかるって、そんな事あるのか？

明日も付いてくるのか？

ワイルドグリズリーの肉がふんだんに使われた料理を食べ終えた後、ロウレット公爵領に鉱山があることを確認してから、明日鉱山に行って採掘をしても良いかとロウレット公爵様に相談した。

すると、あっさりと許可が降りた。

なんというか……拍子抜けって感じだったな。

もう少し理由を訊かれたり、交渉する形になると思ってたんだけど、全くそんなことはなかった。

「随分と簡単に許可を貰えたっすね」

「そうだな。ちょっと予想外だったよ」

「ロウレット公爵様はラガス坊ちゃまが魔靴を造っているのは知っていますし、学生として生活しているから自ら鉱山に入って鉱石を採掘する時間がないことを分かっているから、ではありませんか？」

なるほどね。

確かにロウレット公爵様は俺が魔靴を造っていることは知ってる。

学生の事情も把握出来てるだろうから、あっさり許可をくれてもおかしくないか。

「そういうことか……それは有難いんだけどさ、明日もロウレット公爵様は付いてくるのかな」

「あら、ラガス坊ちゃまはロウレット公爵様と狩りを行うのが嫌なのですか？」

「意地悪な質問をするな。別に嫌って訳じゃない……ちょっと緊張はするけどな」

もう悪い人ではなく、良い人だというのは解っている。

接しやすい人だし……リザード公爵様よりは付き合いやすい人だと思ってるよ。

「でもさ、鉱山ってそれなりに距離があるんだろ」

「そうですね。走り続ければそこまでの距離ではないと思いますが」

「……それはそうだな。でも、領主が二日連続で仕事を休むのはどうなんだ？」

自分でもかなりブラックなことを言ってるのは分かる。

週二日の休みがないとか、普通に考えればブラックだよな……ブラック、だよな？

この世界だと、案外そうでもないか？

まぁ、週二日休息が当たり前か否かはおいといて、領主がそう簡単に休めるとは思えないんだよな。

俺が来るまでに頑張って仕事を終わらせてたとしても、仕事なんていくらでもありそうだし……後、急に仕事が降りかかってくる、なんてことも十分ありそうだ。

父さんだって男爵だけで、毎日書類仕事に追われてるイメージがあるからな。

男爵の超上の爵位である公爵なら、更に仕事量も多そうだ。

「普通は無理かもしれませんが、娘がパートナーを連れて帰ってきた。となれば、無理をしてでも休んで一緒に居れる時間を増やすのではありませんか？」

それは……とても納得出来る理由だな。

まぁ、ロウレット公爵様は良い人だし、明日も狩りというか採掘に付いてきても特に文句はない。

とりあえず、明日になれば解るだろう。

そう思って部屋に戻ってから数十分後、セルシアの腹違いの弟であるフォース君が訪ねてきた。

「えっと……俺に用があるんだよな」

「はい。その……少しラガスさんとお話ししたいと思って」

俺とお話、ねぇ……そんな面白い話は出来ないと思うけど、セルシアの弟であるフォース君からのお誘いだ。

のんびりお話をたのしませてもらおうじゃないか。

「シュラ、後は頼みますよ」

「了解」

二人分の紅茶を淹れ終わると、メリルはサラッと部屋から出て行った。

……もしかして、男だけで話すべき内容が出てくると思って気を利かせたのか？

相変わらず出来るメイドだな。

お互いに紅茶を飲み、少しリラックスしてからお話スタート。

当たり障りない会話をしていると、少し表情に悩みが出しながら相談された。

「その、ラガスさんは社交界ではどうやって迫って来る令嬢たちを躱していましたか」

「…………」

ふぅーーーーー。

今、紅茶を飲んでなくて本当に良かった。

思わず人様の屋敷で紅茶ブーーーするところだった。

何かしら歳相応の悩みがあるんだろうとは思ってたけど、まさか社交界で迫りくる令嬢たちの躱し方、か……まぁ、フォース君からすれば誰かに相談してでも知りたい内容ではあるんだろうな。