それはそれで駄目
「社交界で迫りくる令嬢の躱し方、か……やっぱりフォース君ぐらいになると、多くの令嬢が寄ってくるんだな」
「そ、そうですね。自慢という訳ではないのですが、その……それなりに近づいてくる令嬢が多いかと」
うん、多分本当に自慢じゃなくて困ってるんだろうな。
でも前世の彼女がいない、つくれない人たちからすればどれだけ本人が自慢ではないと思っていても、自慢話にしか聞こえない内容だ。
ただフォース君は見る限り、話の話題ではなく本気で困ってるというか……俺に相談したい様子。
「ん~~~……フォース君、悪いんだけど俺は殆どパーティーというか社交界に出席したことがないんだよ」
「ッ!!?? そ、そうなんですか!」
「あぁ、本当だよ」
物凄い驚き様だな。
やっぱり親の爵位が高ければ、社交界に出席する回数は必然と多くなるんだろうな。
俺以外の兄弟は割と出席してたらしいけど……でも、回数はフォース君の方が多い筈。
皆顔は整ってる方だけど、一応立場は男爵家の令息だからな……立場目当てで近寄って来る人は少なかった……と、思う。
「俺の家は男爵家だから、社交界に出席するのは強制じゃないんだよ。それにあまり社交界には興味がない方だったから、父さんもあまり無理に出席するようには言わなかったんだ」
「そうなんですね……それは、少し羨ましいです」
人によって様々だろうけど、フォース君はあまり社交界が好きではないタイプだな。
子供ながらに色々と気を使う場所ではあるだろうから、好きってタイプは少ないか?
そういえば、俺が参加したパーティーでダル絡みしようとしてきた奴らがいたような……うん、いたな。
股間に魔弾を放って絡まれるのを阻止したけど。
おっと、今はそんな事どうでもいいんだよ。
あまり社交界に出席した経験はないけど、フォース君に伝えられるアドバイスを考えないと…………クッ、そう簡単にサラッと出てこないな。
「……フォース君は、今気になってる人とかはいないのか」
「えっと……今は特にいませんね」
「そうか」
ふむ……これも心の底からの解答だろうな。
多分、ほんの数秒の間に今まで会ってきた、話してきた令嬢の顔を思い出した上で気になる令嬢はいないと答えたんだろう。
顔色や表情にも特に変化はなし。
気になる人がいればそれはそれで………いや待てよ、フォース君は俺みたいな底辺貴族の令息ではなく、公爵家という高位貴族の令息だ。
そう簡単に気になる人の名前とか出して、寄って来る令嬢を退けようとするのは悪手か。
難しいな……本当に良い案が出てこない。
チラッとシュラの方を見ると、どうやら一緒に寄って来る令嬢たちを退ける方法を考えてくれている。
だが、中々良い案が出てこないようだな。
「あまり女性に興味無さ気にするのは、それはそれで駄目だからな……」
「そうなんですか?」
「駄目だと思うぞ。個人的な考えかもしれないけどな」
女性に興味がないって態度を出し続けると、もしかしてそっちの気があるのでは? と思われてしまう。
何度も社交界に出席したことがある訳じゃないから断言は出来ないけど、そんな噂が広まってしまう可能性はある筈。
それはそれで駄目……いや、絶対に駄目だ。
公爵家の令息がその気があるなんて……好みは人それぞれだとは思うけど、フォース君の恋愛対象は普通に女性……なんだよな?
であれば、そんな噂が立ってしまう様な方法は絶対に駄目。
「中々これならいける! って案が浮かばないな……一応訊くけど、お父さん……ロウレット公爵様にアドバイスは貰ったのか?」
「はい、一応貰いました。ただ……公爵家に生まれたのであれば、仕方ない。宿命だと思って受け入れなさいと言われました」
「な、なるほどね……言い返せないというか、納得してしまう部分はあるな」
ロウレット公爵様もフォース君みたいに悩んだ時期があって、でも良い解決策が思い浮かばなかったのかもな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます