……やっぱり採りたい
ワイルドグリズリーの解体が終わり、屋敷に持ち帰って料理人たちに調理してもらってる間、俺は一人で次に造る魔靴のことを考えていた。
亜空間にはまだモンスターの素材と鉱石は残っているけど、学園に入ってからは実家にいる時ほどモンスターを狩れてない。
あと、近くに鉱山がないから鉱石の類も心もとないんだよな。
まぁ……今回の狩りでワイルドグリズリーの爪はたくさん手に入ったし、アサルトワイバーンの素材も丸々くれるとロウレット公爵様が言ってくれた。
「ラガスさん、また考え事っすか?」
「そうだな……考え事と言えば考え事だな」
「もしかして、また厄介な問題が降りかかって来そうなんすか?」
「いや、別に厄介な問題って訳じゃないんだけど……」
というか、厄介な問題ってこう……予め降ってくるのが分からないもんだよな。
いきなり喧嘩腰で絡んできたイーリスとか、俺とセルシアがパートナーだって分かってるのに異議あり! 的な感じで絡んできたバカ王子とか。
「魔靴に使う鉱石の量がそろそろ減ってきたと思ってな」
「なるほどぉ……確かに、最近は全く鉱山に行ってないっすもんね」
「そうだろ。今回の夏休みは鉱山に行く暇がなさそうだからな……どっかのタイミングで補充しときたいんだよ」
ある程度有名人になってしまったから、あんまり堂々と学校をサボるのは駄目だ。
てか、俺がサボろうとすればセルシアが着いてきそう。
もし俺が理由でセルシアが授業をサボってるのがバレたら、どう考えてもロウレット公爵様に色々と言われそう……だよな?
「ん~~~~……だったら、この前貰った迷惑料のお金で買ったらどうっすか」
「……すっかり忘れてた。それがあったな」
いや、本当に忘れてた。
二人の国王様からバカ王子が我儘言った件で、かなりの大金を貰ったよな。
確か二つ合わせて……黒曜金貨十二枚と白金貨三十枚だったか。
それだけの大金があれば、大抵の鉱石は買えるよな。
「でもさ……やっぱり、自分たちで鉱山を探索して鉱石を見つけるのが一番良くないか?」
「あぁ~~~……そうっすね。その感覚派分からなくもないっす」
「だろ。まぁでも、あんまり我儘言ってられない状況……じゃなくて、環境ではあるよな」
学園に入学してしまったんだし、そこはしょうがないと割り切るしかないな。
「そういえばラガスさん、ドレッグさんたちから魔靴の制作依頼を受けてたっすよね。そっちは順調に進んでるんっすか?」
「……ボチボチってところだな」
別にあれだぞ、今の今まで忘れてたって訳じゃないんだよ。
ちょいちょい制作は進めてるんだよ。
でも、騎士団の中でも上位に入る人たちの魔靴だから、あんまりしょぼい物を造る訳にはいかないんだよな~。
だからこそ、今回ワイルドグリズリーやアサルトワイバーンの素材が手に入ったのは非常に嬉しい。
ただ、五人の色を魔靴に出すのであればもう少しモンスターの素材が欲しいところ。
あと鉱石も勿論欲しい。
「…………ここって、鉱山あったっけ?」
「多分、あるんじゃないっすか?」
「あるなら……ロウレット公爵様に相談してみるか」
一日だけ鉱山の中で鉱石を採掘させてほしいって頼めば……多分採掘させてくれるよな?
勿論、採り過ぎるつもりはない。
とりあえず五足分の鉱石を採掘できれば今のところ十分だからな。
「鉱山に入れば、また今日戦ったアサルトワイバーンみたいなモンスターと遭遇できるかもしれないっすね」
「可能性としてはあるだろうな……はは! そう考えるとちょっと楽しくなってきた。夕食を食べ終えたらまずはロウレット公爵様に相談してみよう」
そういえば、今日は特に武器を使わずモンスターの相手をしたよな……なら、明日はがっつり武器を使って倒すか。
いざって時に、そっちの腕が鈍ってるのは良くないしな。
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