顔に出さない

フォース君とリッシュちゃんの順で一人ずつ軽く戦った後は、二人一緒に挑んできてもらう流れになったわけだが……結構息ピッタリ? って感じだな。


髪の色がかなり違うし……多分、双子ではないよな。

でもお互いの動きを読んでいるかのような動きで斬って突いて払ってくるし……もしかしなくても、セルシアに二対一でいつも挑んでたってところか。


一朝一夕で出来る連携じゃないからな………というか、徐々に目が本気モードに……いや、元々二人とも本気だったんだろうけどさ。


なんというか、これが模擬戦ということを忘れている様な気がするんだが。


「ふんっ!!!」


「はっ!!!」


フォース君は俺の上半身を狙って槍を払い、リッシュちゃんは下半身を狙って変則的な体勢からの斬る。


寸分狂わずに来てるから、防御か迎撃しないのであれば躱す方向は一つだな。


「よっ、と」


後ろに軽く跳べば払いも斬撃も当たらない。

やっぱり俺とは身体能力の差が大きい……そう思ってたら、なんとリッシュちゃんが双剣の片方を俺の頭を狙ってぶん投げてきた。


「危な」


投擲のアビリティも使用してただろうな。

うっかり食らえば出血コースだぞ。


「でぇあああッ!!!!!」


これは……槍術アビリティの一点突きか!!


「ふん!」


「ッ!!??」


危ない危ない。

ちょっと意識が双剣の片割れをぶん投げたリッシュちゃんに意識がいってた。


それにしても、良いタイミングで一点突きを放ってくるな。

ちゃんと反応出来たから片手で刃ではない部分を掴めたけど、威力的にはフォース君の年齢を考えれば十分過ぎる。


……ただ、フォース君。

あまりこう……作戦が上手くいった、みたいな顔はしない方が良いよ。


「はぁぁああああッ!!!!!」


投擲のアビリティを使用して投げた双剣を縮地を使って追いつき、キャッチ。

そして俺の意識がフォース君に向いている隙を狙って、リッシュちゃんが双剣で一撃をぶち込む。


そんな感じのプランを一瞬で思い付いたんだろうな。

それとも事前に考えていたのかは分からないけど……悪くないプランだとは思う。


でも、それは相手が想像以上の腕力を持っていなかったらの話だ。


「おらっ!!!」


「えっ!?」


「きゃっ!!!」


一点突きを受け止め、そのまま槍を掴んでフォース君の体ごと持ち上げて振り回す。

そしてそのまま半回転させ背後から襲い掛かってきたリッシュちゃんにぶつける。


そこまで力を込めてぶん投げてないから、多分骨に異常とかはない……はず。

うん、多分大丈夫だと思う。


「えっと……まだやるか?」


もう俺との実力差がどれぐらいあるかは、なんとなく分かったと思う。

セルシアの隣に立つ男に相応しいか否かって審査には合格だと思うんだが………二人の眼を見る感じ、まだまだ諦める気はゼロって様子だな。


「えぇ、まだやります」


「このまま……終われないんで」


そう言うと、二人は自身の木製武器に属性の魔力纏った。

フォース君は火の魔力を纏い、リッシュちゃんは水の魔力を纏った……さすがスーパーエリートだな。


本人たちは勿論努力を積み重ねてるとは思うけど、やっぱりその歳で武器に属性魔力を纏えるのは凄いよ。


それに自分たちのプランが上手くいかなかったとしても、また冷静にコンビネーションで俺を追い詰めようとしてる。

武器に属性魔力を纏ったことで、紙一重では避けられなくなった。


防御個所に魔力を纏えばそれで済む話ではあるんだが……やっぱりそれでも凄いな、二人とも。


ただ……そろそろ模擬戦が始まってから数分が経った。

スタミナが少ないってわけじゃないと思うが、まだまだ全力で動ける時間は短い。


コンビネーションは悪くないが、疲れで動きの精度が悪くなってきている。

そろそろ終わらせて良さそうだな。


「ふんっ!!」


「おわっ!?」


放たれた突きを避けて火の魔力が纏われていない部分を掴み、一気に捻る。

そしてフォース君の力が緩まった瞬間を狙って奪う。


「よっ、ほっ!」


「痛っ! ……えっ、嘘」


魔弾で持ち手の一番下の部分を狙って撃ち、リッシュちゃんの手から双剣をすっぽ抜けさせ、しっかりキャッチ。


「俺の勝ちで良いかな」


「「……参りました」」


ようやく二人との模擬戦が終了し、二人からの試練? に見事合格した。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る