費やした時間を感じる

「はっ!!!!」


「おっ、良い踏み込みだな」


まずはフォース君が一人で槍を強く握り、遠慮なく倒しに来た。

既に身体強化は使っているようだし、木槍に魔力を纏っているところをみると、俺を嘗めているわけじゃなさそうだな。


「ぜぇぇあああッ!!!!!!」


「よっ!」


「ッ!? くっ、はぁぁぁああああああああッ!!!!」


頭部を狙った横薙ぎは悪くない。

間合いも良い感じに取れているし、踏み込み過ぎてもいない。


ただ、それでもまだまだ力は足りない。


腕に魔力を纏わずとも余裕で受け止められる。

受け止められても力押しで潰そうとするところをみると、力には自信があるタイプか?


確かにそれなりに力をあるほうだとは思うが……片手で受け止めてるんだから、あまり力押しに時間は掛けない方が良いぞ。


「ふんっ!!」


「なぁっ!? く、そっ!!!!」


力だけで吹き飛ばしたが、空中で器用に一回転して着地。

そしてもう一度ダッシュして連続で突きを繰り出してくる。


「おっ、と」


もしかしなくても、今体術アビリティの技、縮地を使ったか?

付与魔法を使った様には思えないし……多分そうだろうな。


初っ端の一撃だけはちょっと驚かされた。

多分、レアードだと反応出来たか出来ないか……ちょっと微妙なラインだな。


「くっ!! 本当に、強いですね!!!!!」


「それは有難う。褒めてくれて素直に嬉しいよ」


セルシアの弟からの褒め言葉は普通に嬉しいね。

というか、この子……まぁまぁクールな見た目をしてるのに、結構熱いタイプなんだな。


それとも、俺が相手だから今だけちょっと熱くなってるのか?


「……くそっ。リッシュ!!!!」


フォース君がセルシアの妹の名前を呼ぶと、勢い良くリッシュちゃんが飛び出してきた。


「二人ともそれなりに体術をやってるんだね」


「ッ!! 軽々と、受け止めるんですね」


「こんな見た目だけど、力にはそれなりに自信があるんだよ」


リッシュちゃんもフォース君と同じく、縮地を使用しながら双剣で斬りかかってきた。

木剣じゃ無ければ素手で受け止めようとは思えない、良い一撃だ。


てか、二人一緒で良いと言ったんだけど……まぁ、最初ちょろっとだけでも一人だけで俺に挑みたいって感じか。


「はっ!! ふっ!! やっ!! せいっ!!!」


「………良い速さだね」


双剣という手数が多いという利点を惜しみなく活かしている。

速さはフォース君と比べてやや上で……力に関してはフォース君の方が上ってところか。


でも、速さだけを重視して一撃一撃に重みが無いという訳でもない。

フォース君もそうだが、メイン武器の訓練に時間を費やしてるのか解らせる攻撃だな。


攻撃方法も持ち手を逆にしたりして不意を突こうとしてくる。

ただ……メリルがよく双剣を使うから、双剣の相手には慣れてるんだよね。


だからリッシュちゃんの攻撃はまぁ……うん、フォース君と同じくある程度読めるから回避も防御も全く問題無い。


でもあと六年か七年経って……木剣じゃなく真剣であれば、今みたいに軽く相手するのは難しいだろうな。


「クロススラッシュ!!!!」


体を回転させながら斬り上げた後に双剣術、クロススラッシュを放つか。

若干不安定な体勢だったのに、よく狙いをズラさずに放ったな。


「よっ!!」


だが、まだまだメリルが放つクロススラッシュと比べて威力が低いから、下から蹴り上げるだけで消し飛ばせる。


「えっ!!??」


驚く表情を見ると、こういった対処方法をされたことはないみたいだな。


俺の脚力なら、脚に魔力を纏えば容易に吹き飛ばせる。

それが分かってるからメリルやシュラ、セルシアたちは驚いていないみたいだけど……あんまり戦いの最中に動きを止めるのは良くないぞ。


「隙あり」


「わっ!!!???」


頭に攻める、防ぐの思考がなくなった瞬間を狙って近づき、腹に手のひらを当ててそのまま押し飛ばし、フォース君の場所まで押し戻す。


「よし、そろそろ二人同時に掛かってきて良いよ」


「「……」」


それはちょっと嫌だって顔してるけど、勝つためには仕方ないって表情だな

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る