返事はしてくれる
「……この方向は、訓練場?」
「そうなのか?」
どうやら俺たちはロウレット家の訓練場に向かっているようだ。
しかし何故訓練場に……もしかして、報酬を払うから自分と戦って欲しい。
そういうことなのか?
……あり得なくはない話か。
ロウレット公爵様からは戦闘狂って雰囲気を感じないけど、娘のパートナーとなる人物の実力を肌で感じておきたい。
そんな思いがあってもおかしくないよな。
もしロウレット公爵様と模擬戦をするのであれば……や、やっぱり切り札を使わずに勝てるはずないな。
いや、そもそも勝つ必要はあるのか?
セルシアの隣に立つ者として相応しい実力を見せればオッケーという場合も……ただ、あんまり獣魔法とかを披露したくないって思いはあるんだよな。
でもロウレット公爵様を相手に手加減すれば、それはそれで怒られそうな気がするし……ど、どうすれば良いんだ俺は!!??
「ラガス、ちょっと顔色が、良くない。大丈夫?」
「お、おう。大丈夫だよセルシア……うん、問題無いよ」
腹痛も頭痛もないから、これから誰かと模擬戦を行うのに支障はない。
というか、そういった理由で逃げたらちょっとダサいし……なにより報酬を出してくれるんだ。
未来のハンターとして、貴族からの依頼は上手く達成してみせないとな。
「ここが兵士や騎士たちが使っている訓練場だ」
ようやく扉の前に到着し、中に入ると……兵士や騎士はいる。
だが、全員訓練は行っていなかった。
寧ろ……円をつくって、これから始まるかもしれない模擬戦を観ようと? してるって感じがする。
というか、兵士や騎士だけじゃなくて魔法使いの人たちもいるよな。
それで円の中心人は、二人の子供が立っていた。
男の子と女の子だな……もしかしなくても、セルシアの弟と妹か?
「フォースにリッシュ……なんで?」
「セルシアの兄弟?」
「うん。腹違いの弟と妹」
な、なるほどなるほど……確かに髪の色が違うし、貴族だからそういった事情があってもおかしくない、か。
「ラガス君。君にはあの二人と模擬戦を行って欲しい。報酬は金貨五十枚でどうかな」
「はい、是非受けさせてもらいます」
一回模擬戦するだけで金貨五十枚だ。
断る理由は一ミリも無い。
ただ……フォース君とリッシュちゃんが俺を睨んでる? のが、ちょっと不安なんだが。
「二人は……セルシアのことが大好きでね。元々ジーク君のことも気に入らなかったんだよ」
「そ、そうなんですね」
セルシアの元婚約者だし、目の前の二人と面識があってもおかしくないか。
ジークのことだから、二人とも仲良くなろうと頑張りそうだけど……あの俺を見る目を考えれば、呆気なく失敗しただろうな。
フォース君とリッシュちゃんはガチ目のシスコンなのか?
セルシアがジークのことを気に入っていたかどうかは置いといて、婚約者として立場や実力は問題無かっただろうからな。
「えっと……よろしく」
「「よろしくお願いします」」
おっ! ちゃんと返事は返してくれた。
冷たい目はそのままだけど、返事はしてくれたよ……良かった。
さすがに何も返してくれなかったらメンタルダメージを食らってたよ。
いや……それよりもメリルが切れてたかもしれないな。
「二人とも、ラガス君が二人からの挑戦を受けてくれることになった。ちゃんと礼を言いなさい」
「「ありがとうございます」」
「い、いえ」
若干敵視してる感じではあるけど、そこら辺はしっかりしてるんだな。
こっちとしては、それだけで嬉しいよ。
「えっと、それでは二人一緒に模擬戦を行えば良いんですよね」
「そうだな……うん、二人ともそうしなさい」
「「ッ!!??」」
えっと……反応を見る限り、もしかして一対一で模擬戦を行うつもりだったのかな?
「二人ともラガス君の活躍を観てないから予想し辛いかもしれないが、今の二人ではどう足掻いても勝てる相手ではない。ラガス君にとって一人増えたところで何も支障はない」
ろ、ロウレット公爵様……そんな二人の気持ちを荒ぶるようなことを言わなくても。
ほら~~~、二人の眼に若干怒りの感情が宿ったじゃないですか。
まぁ、年齢がレアードとセリスの二人と同じか、一つ下ぐらいの子供二人に負けるつもりは全くないけど。
「ラガス君、武器はいるか」
「いえ、このままで大丈夫です」
「ふむ、そうか。それでは早速始めよう。審判を私が行う」
セルシアの兄弟なんだし、あんまりケガさせないようにしないとな。
「それでは、始め!!!!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます