がっつり私情
「という感じで、断りました」
「うむ、そうかそうか。それは良い判断だ。いや、セルシア以外の妻を絶対に迎え入れてほしくないという訳ではないが、リザード家はこう……個人的にちょっとな」
「バルンク様、私情ががっつり入っていますが」
「うるさい。今それは良いだろ」
……なるほど、個人的にリザード家はちょっと気に入らないんですね。
まぁ、俺もあの中々崩れそうにない鉄仮面を被っている優男のリザード公爵様はあんまり好きではないし。
「安心してください。立場云々以前に、イーリスと相性が抜群に悪いので」
「ふっふっふ、それは仕方ないな。これから一緒に生活するうえで、互いの相性は大切だ!!!」
俺がイーリスとくっつくことはあり得ないって言ったら、凄い喜ぶな。
もしかして……学生時代のライバルとか、そんな関係性を持ってるのか。
「観客席からなんとなく二人の空気が悪いのは察していたが、いったい何があったんだい」
「いや、なんと言いますか……単純に向こうが俺のことを凄く嫌っているだけかと」
「そうなのか……確かに人には合う合わないがあるのは当たり前だが……ラガス君は、今までに数回ほどしかパーティーに参加していなかったと記憶しているが、合っているかな」
「はい、その通りです。あまり貴族の令息としては良くないことだとは思っていますが、あまり貴族同士のパーティーは堅苦しく感じてしまうので」
アリクやレアード、セリスたちですらそれなりに参加してるみたいだけど、俺はな……うん、今思い返すと本当に社交界に参加していなかったよな。
「はっはっは!! それは仕方ないことだ。パーティーに参加するのは貴族として当然かもしれないが、私もラガス君と同じく堅苦しい……もしくは息苦しいと感じることがある」
ロウレット公爵様でも、そう感じることがあるんだな。
「イーリスは、私とラガスが、パートナーになったのが気に入らない、様子だった」
「ほぅ……なるほど、そういった理由だったか」
そういえばそうだったな。
初っ端、あんなに険悪な態度を取られたのは、俺がセルシアのパートナーに全く相応しくないから。
そんな理由だったな……貴族として婚約者になったのであれば「あんたには相応しくないから辞退しなさい!!!!」って言われても仕方ないというか……まぁ、納得出来なくはない。
何だかんだで俺は男爵家の四男で、セルシアは公爵家の三女だからな。
立場という点については全くもってつり合いが取れていない。
だが、パートナーの制度に関しては……こう、他者が相応しい相応しくないどうこうって言えないあれだからな。
それでも長年友人だったイーリスからすれば、基本属性の魔法アビリティを一つも習得出来ない俺はセルシアの隣に立つ人物として相応しくないと、今でも思ってるんだろうな。
「確かに貴族に取って魔法アビリティは重要だが、ラガス君には圧倒的な体術と魔弾、それに武器術がある。それは考えればセルシアのパートナーに十分相応しいと思うのだが……ふふ、それは大人である私の考えというものだろうな」
?? なんか……ロウレット公爵様の口ぶりからして、イーリス以外にも同じ様な人物がいるって口ぶりだな。
「イーリスは、魔法が得意。だから、ラガスを強く、否定したかった……かもしれない」
「魔法だけが全てではないのだがな。現に、ラガス君はあのような素晴らしい一品を造り出す力も持っているというのに」
何を見て……あれは、俺がロウレット公爵様に造った魔靴。
部屋に入った時は気付かなかったけど、あんなところに飾ってあったのか。
な、なんか嬉しいやら恥ずかしいやらって感じだな。
「まぁ、何はともあれリザード家の娘と婚約関係になっていなくて嬉しい、というのが私の思いだ」
「は、はは……今後ともそうなることはないのでご安心を」
身内しかいないからだろうけど、本当にストレートに言うな。
「さて、本来なら今日一日ぐらいはゆっくりしてもらうべきなのだが……ラガス君、報酬は払うので少し頼まれて欲しいことがある」
「わ、分かりました」
いったいどんな頼みなのかは分からないが、ロウレット公爵様が報酬を払うと口にしたのだから、是非受けさせてもらおう。
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