悪いが趣味じゃない
「それじゃあ、やっぱりラガス兄さんはその……イーリスさん? とも婚約するの?」
「なんでそうなるんだよ。その話は断ったって言っただろ」
「そうだけどさ、強くて綺麗な人なんでしょ」
「……確かにその通りではあるな」
接近戦はまだまだ素人に毛が生えた程度だろうけど、魔法を使った遠距離戦の腕は高い。
容姿は……セルシアとは違った鋭い美しさ? ってのがある感じか。
綺麗なバラには棘がある。
その言葉が相応しい見た目と性格をしてるな。
「なら、ラガス兄さんの好みにピッタリじゃん」
「セリス……俺の話を思い出せよ。性格面では全く合わないんだよ。というか、向こうが一方的に俺のことを嫌ってるし……親であるリザード公爵が俺との婚約を望んでいたとしても、無理なものは無理だよ」
向こうが一方的に俺のことを嫌ってなければ、イーリスの印象は変わったかもしれないけど……いや、そもそも俺はセルシアとのパートナー関係がなければ男爵家の四男。
イーリスは爵位の上下関係をそれなりに意識するタイプの令嬢っぽいから……結局仲良くなるのは無理そうだな。
「……でもラガス兄さん、もしかしたら向こうの気が変わって好意的になるかもしれませんよ」
「えぇ~~~、そんなことあるか?」
レアードは俺よりも女心を解ってそうだけど……万が一、億が一、そうなる可能性はない筈だ。
仮に……本当に俺に対してそういう気持ちを持ったとしても、今までのこと……あと、イーリスの性格的に素直に好意を伝えてくることはない。
ツンデレみたいな形になるんだろうけど、それはそれでウザいというか鬱陶しいというか……世の中のツンデレ好きには悪いが、俺は嫌いなんだよな。
「もしかしたらあれよね、リザード公爵からラガス兄さんと仲良くなりなさいって言われて、感情を押し殺してラガス兄さんに近づいてくるかも」
「もしそういう流れで近づいてくるなら、お前とそういう仲になる気はないから無理するなって正面から伝えるな」
イーリスには俺じゃなくてちゃんと良い相手がいるだろ。
幸いにも実家は公爵家。
結婚相手は基本的に選び放題のはず。
まぁ………結婚相手の条件がセルシアよりタイマンで強いとか限定してしまうと、条件に当てはまる人はかなり少なくなると思うが。
てか、あれだけ気が強い人と望んで結婚したいと思う男はいるのか?
絶対に結婚した相手は尻に敷かれる未来が訪れるだろ。
よっぽどドМ君なら喜んで結婚したいと望むのかもしれないが……本人の前では言えないけど、行き遅れの令嬢になりそうだ。
「ラガス兄さん……超容赦ないね」
「感覚的に容赦する必要がないと思ってるからな」
メリルにも結構遠慮なく言うけど、イーリスはなんというか……本当に容赦なく言葉をぶつけても良いと思ってしまうんだよな。
向こうから容赦ない言葉をぶつけてきた訳だし。
「そういえばさ、やっぱり学園に入ればアリク兄さんやクレア姉さんより強い人がいるんですよね」
「……いるな」
まずはロッソ学園の現生徒会長のリース先輩。
リース先輩はマジでアリクやクレア姉さんよりも強い。
後は……フレイア女学院のレーシア・ラージュさんか。
アリクなら身体能力のゴリ押しでいけるかもしれないけど……それでも五分五分ってところかな。
クレア姉さんにとっても厳しい相手になる。
「二人も同年代と比べれば圧倒的に強いと思うが、それでも同じような例外的な人は存在する……もしかして、学園に入学するのがちょっと怖くなってきたか?」
「まさか、そんなことないよ。寧ろ、そんな奴がいるなら是非とも倒したいよ」
「レアードに同感ね。同年代にそんな人がいるなら、絶対に私の剣でぶった斬ってやるんだから」
はは、杞憂だったみたいだな。
ただ……その例外的には貴族の学園だけに現れる訳じゃないけどな。
「勿論、ラガス兄さんにだって勝つつもりだから」
「同じく!!!」
「……はっはっは!! やる気満々だな。良いぞ、二人が学園に入学したらとりあえず卒業するまで、いくらでも勝負してやるよ」
こりゃもしかしたら、俺もうかうかしてられないかもな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます