休まる日はあったのか
SIDE ラガス
「ふぅ~~~、今日はゆっくり寝れそうだな」
風呂から上がり、ベランダで夜風の心地良さに身を委ねていると二人の客が現れた。
「ん? レアードとセリスか。どうしたんだ?」
「いや、ほら……昼間は皆で模擬戦ばかりしてたから、ラガス兄さんが学園でどんな感じで過ごしていたのか聞きたくてさ」
「俺の学園生活か……父さんから既に聞いてるかもしれないが、それなりに山あり谷ありな学園生活って感じだぞ」
学園に入学してから体験したイベントを大雑把に二人に伝えた。
大雑把だが、それなりに色々とあったので俺が一方的に三十分近く話すことになった。
ただ、それでも二人は眼をキラキラとさせながら聞いてくれた。
「で、色々と終わって一応夏休みだから実家に帰って来たんだ」
「はぁ~~~……凄いね。休まる暇がなかったんだね」
「いや、別にそんなことはなかったぞ。アルガ王国に行くと決まった時は全て終わるまでちょっと心労はあったけど、全て終われば……うん、疲れは取れたよ」
二か国で行う大会に関しては単純にお祭りだから、実際に開催されるまで楽しみだが……それまでにバカ王子が無茶をして国境を乗り越えてくるかもしれない。
その可能性を考えると、今後ちょっと心配だなって思いはある。
ただ、それ以外は常に心配したり心労となるイベントなどはないし……うん、ないよな。
「でも、いきなり学園に入学してセルシアさんの元婚約者さんと決闘になったのはなんというか……大変でしたね」
「ま、まぁ……大変というか、気の毒にとは思ったよ」
いや、本当に気の毒だと思った。マジで思ったよ。
だって……確かにセルシアとは学園に入学するまでに……パートナーだと分かる前に交流はあったけど、別に俺は心底惚れていた訳ではない。
セルシアはジークに興味がなかったっぽいけどな。
それでもジークはセルシアにべた惚れって感じだったし……俺がいなければ特に何も起こらず二人は結婚した筈。
バカ王子が俺とセルシアの関係にいちゃもんを付けたくてアルガ王国に行きはしたが、さすがに向こうさんも婚約が決まっている関係に関して文句は言わないというか言えない。
さすがにそれは非常識だし……いや、とりあえずあのバカ王子のことは一旦記憶から消そう。
「なんか……形としては俺がジークからセルシアを横から奪い去ったってっ感じだからな。まっ、ジークは根が良い奴だから今は仲が険悪ってわけじゃないけど」
そういえば、従者の二人は俺を嫌ってたな。
今でも嫌ってるのか? でも、そういうのを態度に出すとまたジークが怒るだろうな。
「た、確かにジークさんが怒ってしまうのも無理ないかも……私だったら絶対に一発かましてやりたいって思うもん」
「僕も……嫌な気持ちにはなるかな。というか、その……婚約者繋がりだとラガス兄さんの友達のリーベさんの方が色々と悲惨というか……」
「あ、あぁ……あいつの目の前でそんなことは言えないが、悲惨と言えば悲惨な結果だったな」
結局はリーベがアザルトさんのことを諦めたんだが……リーベの気持ちを考えると、それが正解かもしれない。
肝心のアザルトさんが……普通に考えてちょっとお花畑な頭をしてるっぽいからな。
見た目はそんな感じじゃないというか……ちょっと凛々しい容姿まであるのに、もっと冷静な判断を下せなかったのか不思議だ。
見た目が正確に直結するわけではないけどさ。
「ただ、やっぱり制裁が下されたんですよね」
「夏休みの間に実家に報告は言っただろうし、多額の借金を負う事になるだろうから……とりあえず夏休みが終わった後、学校にはいない気がするな」
成績があまりにも悪かったり、素行不良が過ぎれば退学はあり得る。
家の事情で止めるって流れも決して珍しくはないだろうから、そこまで生徒たちが騒ぐことはないだろ。
「あと、やっぱりラガス兄さんはモテモテだよね!!!!」
「モテモテって……どっからその言葉が出てきたんだよ」
「だって、二つ上の先輩から子供が欲しいって言われたり、リザード公爵家から縁談の話が来たりしたんでしょ!!!」
「ぶっ!!! あ、あぁ……い、一応な」
確かにそんなことはあったんだが……それはモテモテ、というのか?
サルネさんは俺が好きというか、俺の遺伝子に興味があるだけ。
それにリザード公爵家から縁談が来たとはいえ、イーリスとはぶっちゃけクソ仲悪いし……あんなに仲が悪くなった相手はあいつが初か?
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