皆元気過ぎる

「あぁ~~~~、クレア姉さんにもまだ勝てないか~」


「ふふ、当然じゃない! まだまだレアードには負けないわよ」


……クレア姉さん、まだまだ余裕があるよって雰囲気出してるけど、実は結構危なかったな。

頑張って訓練を積み重ねてきた年数は当然、クレア姉さんが上。


でも、やっぱり男女で差はあるから……いずれ棒術だけの模擬戦だとレアードが常勝するようになりそうだな。

それでも今はまだクレア姉さんの方が四つ上で、体格的にレアードが完全に勝ってはいないし、技量に差がある。


「どうよラガス! 私の接近戦も捨てたもんじゃないでしょ!!」


「そうですね。やはりクレア姉さんの腕なら接近戦タイプとしてかなり通用するかと」


完全に成長が止まってはいないからな。

肉体的にはまだまだこれから成長する筈だし……技量も頑張り次第でまだまだこれから。

でも、バディというか相棒というか……従者であるミーシャさんががっつり接近戦タイプだから、そこまでクレア姉さんが接近戦を頑張る必要はないんだよな。


「むっ、本当にそう思ってるのか微妙な顔だけど……まぁ良いわ」


「は、はは……本当にクレア姉さんの棒術は前衛として十分に通用すると思ってますよ」


うん、本当に嘘じゃない。

クレア姉さんが戦闘服を身に纏えば、どっからどう見ても魔法を使って戦うタイプに見える。


でもいきなり殴られたり棒で叩かれれるとは思わない。

その奇襲だけで対人戦なら仕留められる。


魔法使いを装った棒使いなのかと思わせて、実はバリバリ攻撃魔法を使えますってパターンで倒すことも出来るし……接近戦が出来る魔法使いはやっぱり強いよ。


「ラガス兄さん、もう回復したよ! 今度は私とやろ!!!」


「分かった分った。分かったからそんなに急かすな、ちゃんと相手するから」


セリスはセルシアと同じでクレア姉さんやレアードと逆バージョンなんだよな。

基本的に武器を使って攻めるけど、やろうと思えば魔法アビリティを使って攻撃することも出来る。


マジでうちの家は戦える人多過ぎるな。

勿論良いことだとは思うけどさ。


「ちゃんと木剣を使ってよ」


「分かった」


レアードとの模擬戦では使わなかったが、セリスは木剣を使って欲しいのか……俺との差がどれだけ縮まったのか知りたいって感じか。


「やっ!!!」


良いダッシュだな。

攻撃に意識を全振りしてるって感じなく、しっかりカウンターにも対応しようって動きだ。


あっ、レアードのやつ……今度はセルシアに勝負を挑んでやがる。

ちょっとは休めっての。

スタミナは同年代と比べて多いとは思うけど……まっ、好きにやらせておくか。


「ラガス、兄さん! 意識が、どっか、いってない!!!!」


「おっと、すまんすまん。ちゃんとセリスとの模擬戦に集中するよ」


「むぅ~~~、ちゃんとこっちに集中してよ、ね!!!!」


「ッ!!!」


今のは良い一撃だったな。

振っている間はしっかりと力が抜けていて、俺の木剣に当る瞬間には力が入っていた。


ロングソードの技量だけなら、アリクもうかうかしてられないかもな。


「今のは良い一撃、だったのにな!!」


「自分で言っちゃうのか。でも、良い一撃なのは否定しないぞ」


「ラガス兄さんが、そう言ってくれるのは、嬉しいけど!!!! そんな余裕な表情で、言われても!! 本当に利いてるのか、分からない、よ!!!!」


「はっはっは、それはそうかもな。でもな、重い一撃ってだけで言えば俺は毎日シュラと模擬戦してるからな。重い一撃にはなれてるんだよ」


メイン武器は素手か大剣だけど、シュラの奴もロングソードもそれなりに扱える。

体格差や身体能力の差的に、まだまだシュラの一撃の方が重い。


「それは、納得出来ちゃう、かな!!!!」


「はは、そうだろ」


色々文句たれたれな様子だけど、攻め方は本当に様になってるな。

力任せに攻める訳じゃない。でも、決して力が籠っていない攻撃を放つわけでもない。


偶に足払いも入れてくる。

これじゃ、大抵の同年代の令息たちはセリスと模擬戦したらコテンパンにやられそうだ。


「ほい、っと。俺の勝ちだな」


「うぅ……はぁ~~~、参りました」


両手で振り下ろされた木剣を左手の手刀で受け流し、右手に持つ木剣を首に添えてセリスとの模擬戦は終了。

この後、仕事を終えた父さんや母さんが混ざって夜になるまで延々と模擬戦を繰り返すことになった。


改めて思ったな、うちの家族は皆元気過ぎると。

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