二人のタックル

門の前に立っている兵士に挨拶をし、玄関に着いたタイミングで勢い良く扉が開いた。


「「お帰り、ラガス兄さん!!!!」」


「おっと、二人ともただいま」


弟のレアードと妹のセリスが出迎えてくれた。

二人が同時に出迎えてくれたのは嬉しい……だが二人共、もう幼い子供じゃないんだ。


十歳の二人に突進されると、うっかり転んでしまうかもしれない。

今回はなんとか耐えられたけど、仮に……ないとは思うけど、身体強化を使われてたら間違いなく転んでたと思う。


「二人とも、あんまあり勢い良く飛びついちゃ駄目でしょ」


「でもでも、久しぶりのラガス兄さんだよ!!」


「そうだよ。それにラガス兄さんなら俺たちが飛びついたって全然ダイジョブだし」


レアード、全くそんなことはないぞ。

二人が身体強化を使ってたら間違いなく転んでたはずだ。


「ただいま、母さん」


「えぇ。お帰り、ラガス。少し大人っぽくなったんじゃないの?」


「そうかな? まぁ、学園に入学してから色々とあったからね」


「その色々を是非聞きたわね。さぁ、皆さんも中に入って」


セルシアたちも一緒に中へ入り、居間に向かう。

そして直ぐに父さんがやって来た。


「よぉ、ラガス。この間ぶりだな」


「そうですね。父さんは変わらず元気ですか?」


「あぁ、勿論元気だよ」


……多分、嘘じゃないな。

表情を見る限り、俺のせいで苦労してるって感じではなさそうだな。


「セルシアさん、息子がいつも世話になっています」


「ラガスは迷惑を掛けてないかしら」


「問題、ありません。いつも一緒にいて、楽しいです」


……ヤバい、普通にそう言ってもらえると嬉しい。


「メリル、シュラ。ラガスは無茶をしてないか?」


「そうですね。ラガス坊ちゃまの実力を考えると、あまり無茶はしていませんね」


おいおい、まるで普通に考えれば無茶してるって言い方じゃないか……ちょっと無茶してるとは思うけどよ。


「不満そうな表情ですね、ラガス坊ちゃま。基本的には、元を潰したいとしても盗賊の討伐などは従者に任せるものですよ」


「もしかして来る途中、盗賊に襲われたのか」


「え、あぁ……はい、そうですね。でも安心してください、きっちり返り討ちにしたので」


「そうなるだろうな。確かに若干心配だが、普通に考えてラガスに勝てる盗賊はそうそういないだろ」


さすが俺の父さん、良く分かってらっしゃる。

あれよりもう一段階強くても、強化系のアビリティや魔弾をフルで使えば問題無い。


だからメリル、そのちょっとぐらいは釘を刺して欲しかったって面は止めろ。


「メリル、ラガスさんは後ろから命令するようなタイプじゃないだろ。俺たちと一緒に前に出て戦ってくれる、もしくは後ろからバリバリ支援して戦いに参加してくれる人だ。ラガスさんの性格を考えてみろ、後ろから俺たちに指示を出すだけのグータラ主になってみろ。病気かと疑ってしまうだろ」


「……それはそうですね。そうなったらそうなってしまったで心配です」


…………うん、そうなんだろうな。

シュラは決して俺を貶してはいない。寧ろ褒めてくれてるんだ。

絶対に脳筋戦闘バカとかは思ってない筈だ。


「はっはっは!! 確かにそんな性格になったらちょっと心配だな。さて……ちょっと詳しく聞きたい事があるんだけど「「ラガス兄さん、遊ぼ!!!」」……レアード、セリス。もう少し待ってくれないか」


二人とも我慢の限界だったみたいだな。

もう十歳なんだから話し合いの最中にいきなり入ってくるのは止めてほしんだが……まぁ、兄としては慕ってくれてるのは嬉しいけど。


「レアード、セリス。もう少し我慢しなさい」


「クレアの言う通りだ。俺らが相手になってやるからあと少し待て」


「えぇ~~~、早くラガス兄さんと遊びたいんだけど」


「そうだよ、お話なんていつでも出来るじゃん!!」


……レアード、その言葉はお前らと遊ぶことにも当てはまってしまうぞ。

父さんが聞きたいのはバカ王子との決闘についてだろうから、もう少しだけ二人には待ってもらおう。

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