それでも諦める保証はない

父さんから詳しく聞きたいと言われた内容はやはり、第三王子と決闘を行った件に関してだった。

その事に関して、特に包み隠すことなく全てを伝えた。


「な、なるほど……そういう結果になったのか、王族といえどラガスが同年代の子供に負ける筈はないか」


「良くやったわ、ラガス。そういうバカから大切な人を守ってこそ男よ!」


「あ、ありがとう。母さん」


しかし母さん、あんまり王子のことをバカと言うのはよろしくないのでは?

今は確かに身内しかいないけどさ。


というか、大切な人とハッキリ言葉にされると……ちょっと恥ずかしいな。


……うん、やっぱりセルシアもちょっと照れてるっぽい。


「第三王子がガチガチにマジックアイテムで身を固めてたから、遠慮なしに殴ることが出来たよ」


「ラガスが遠慮なしに殴った、か……一応聞いておくが、アルガ王国の第三王子は生きているんだな」


「はい、勿論生きてます。さすがに殺してしまったら向こうの立場的に対戦中に起こった不慮の事故では済まないと思ったので」


「そうか……良い判断だ。向こう側が少し強引に起こした件ではあるが、殺さなくて正解だ」


父さんもやっぱりそう思うよな。

俺たち的にはもしかしたら、国境を乗り越えてセルシアに会いに来ようとしてるんじゃないかって思ってるから、ほんの少しだけ偶然を装って殺しても良かったと思ってるけど。


「あと、二か国合同で行う大会を国王様に提案したそうだな」


「はい。それに関してはまぁ……ほぼほぼなんとなく、思いつきです」


祭りの雰囲気は嫌いじゃないし、まだ出会えてない猛者に会えるかもしれない。

大会の様な重要な場だからこそ、力を発揮する人がいるかもしれない。


個人的には、そういった楽しみがある。


「来年に開催するのは無理だと思いますが、再来年……俺が三年生の時にはおそらく開催されるかと」


「再来年か……楽しみではあるな。そして、二年後にはレアードとセリスも学園に入学か」


「そうなりますね。二人の実力なら国内で行われる大会であれば、間違いなく一年の部のシングルスでどちらかが優勝、準優勝。そしてダブルスで優勝できるかと。学年合同の団体戦でも間違いなく活躍出来ると思います」


レアード、セリス世代の子供たちが平均的にどれぐらい強いのかは知らないけど、あの二人がそこら辺の令息や令嬢より弱いとは思えない。


まだ実家で暮らしてた時にちょいちょい模擬戦の相手をしてたけど、世間一般的には十分天才と呼ばれるレベルに達していた筈。


「そうか……ふっふっふ、また周りの連中に子供たちを自慢出来るのは嬉しいな」


「そうね、私もお茶会や社交場でまた自慢してしまうわ」


……二人とも、そんなことしてたのか。

そりゃ子供が大勢の人たちの眼に映る場所で活躍してたら自慢するかもしれないけど……そんな場面を想像すると照れるというか恥ずいというか……まぁ、嬉しいから良いんだけどさ。


「とりあえず第三王子とぶつかった件で起こったのはそんな感じですね」


「そうか……何はともあれ、ラガスたちが無事で良かったよ。呼ばれた理由が理由だったからな。もしかしたら暗殺者でも送られてるんじゃないかって心配だったんだよ」


「そうね。セルシアさんの魅力を考えれば向こうが強引な手段に出てもおかしくありませんからね」


うんうん、それに関しては全く同意だな。

一応向かうが馬鹿な気を起こさないようにたっぷり呪いを与えたり、二度と子供をつくれない体にしたけど……それでセルシアも諦めるって保証はないからな。


というか、暗殺者に関しては俺の方が使ってるんだよな。

でもまだ二人にはディーザスの連中に関して話してなかったな……まっ、別に今すぐじゃなくても良いか。


「帰って来てそうそう話を尋ねて悪かったな。体力が大丈夫なら……レアードとセリスの相手をしてやってくれないか」


「はい、勿論大丈夫ですよ」

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