人質の意味無し
「おい、聞いてんのか!!! よ、ぉ……」
「きっちり聞いてるよ」
動いたらこいつの首を掻っ切る。
お前らは良いところの坊ちゃん嬢ちゃんのようだし、人質が死ぬかもしれないと分かったら動けないだろ!
な~~~~んて考えてたんだろうな。
「お見事です、ラガス坊ちゃま」
「これぐらい普通だって。あいつ、この状況をどう切り抜けるのか。それしか考えていなかったからな」
魔弾に隠蔽の効果を付与して、念のため後ろから撃った。
あの生き残りが魔力感知を使ってたら……もしかしたら気付かれてたかもしれないが、仮に魔力感知のアビリティを会得していても使う余裕はなかっただろうな。
「メリル、お前らはあのエルフのメンタルケアをしてやってくれ。死体は俺たちだけで埋める」
「かしこまりました」
あの様子からして、随分と酷い目にあっただろうな。
あんまり外見的な傷はないが、どう考えても内面に大きな傷を負ってる。
「やっぱり盗賊は碌なことしないっすね」
「盗賊だから碌なことしないんだろうよ」
「ラガス様、まだあそこで転がってる……オルバでしたか?」
「あぁ、盗賊団長様の名前はオルバだ」
「なら、そいつの首だけは持って行きましょう。近くの街に持って行って討伐したと伝えれば懸賞金が貰えます。あと、なるべく盗賊団を討伐した時は報告した方が良いので」
「分かった。あいつが毒で死んだ後に切断しておく」
なるほどな。確かに盗賊団を潰したって近くの街か村に伝えるのは重要だ。
ただ、討伐したって証明としてトップの首があれば、俺たちでも信用してもらえるだろう……てか、それで信用してもらえなかったらどうやっても証明出来ない。
「それはそうと、ラガスさん。あのエルフの女性はどうするんすか?」
「見たところ大人だろうから、一番近い街までは一緒に行こうと思う。置いていって死なれたら目覚めが悪いからな」
「そういう感じっすね。了解っす」
「後……戦えるんだったら、弓か短剣でも渡して……盗賊だったら硬貨も溜め込んでるだろうから、それを渡そう」
盗賊に捕まって女性としての尊厳を潰され、もう生きるのも辛いと思ってるかもしれないけど……人生は長い。
というか、人族である俺の何十倍も良きるエルフなら尚更、人生を捨てるには早過ぎる……と、思う。
正確な年齢は知らないから、実際のところ大人の女性か……それともおばさんなのかは知らないけど。
狼竜眼を使えばステータス欄にある年齢が見れるけど、そんなことの為に狼竜眼を使ったらメリルに無茶苦茶怒られそうだ。
「それにしても、結構雑魚ばっかりだったっすね」
「まぁ、あんまり油断し過ぎるのは良くないが、確かに強くはなかったな」
「それはあれじゃないですか。自分たちが毎日対人戦ばかりしてきたからじゃないですか?」
ルーンの言う通りだろうな。
確かに盗賊も対人戦を実戦で経験してるだろうけど、基本的には弱い相手から……もしくは数の有利を使って潰す。
偶にモンスターの相手とかしてるかもしれないが、基本的に強くなる為の特訓とかは一切やってない筈だ。
「だな。俺たちぐらい、毎日特訓してる人は珍しいんじゃないか」
頭のオルバだけはそれなりに戦える……ハンターのランクで言えば、中堅どころのサファイヤかルビーってところかもな。
それだけの実力があっても、こっちが数の力でボコボコにしたからあっさり終わったけど。
「それは……そうなのか、ルーン」
「そうだな……武器をメインで戦おうと思ってる令息は態度な奴でなければ、日頃から訓練を行っているとは思うが……ラガス様達の場合は質が高い。加えて、今日みたいな一対複数みたいな戦いを想定した模擬戦も行っている。そんな訓練を毎日行っている自分たちであれば……余裕をもって潰せる相手だったかもしれない」
ルーンとキリアさんも確実に強くなってきてるからな。
よし、死体を全部埋め終わった。
さて、残りはあいつだけだが…………お、丁度死んだな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます