考えるのが面倒になった

「……なぁ、こいつ。なんで盗賊なんかになったんだろうな」


「急にどうしたんすか、ラガスさん」


「いや、こいつはそれなりに強かっただろ。シュラたち四人で戦ったから結構あっさりと終わったけどさ」


「……そうっすね。それなりに強かったと思うっすよ。身体強化系のアビリティを使ってなかったら……結構良い勝負になってたんじゃないかと」


ま、まぁそうかもしれないけど……それだとうっかり大怪我を負う可能性があるだろ。

そうなってもシュラは戦いそうだけど。


「だろ。普通に考えればハンターとか傭兵業でもやってれば、普通に暮らせてたと思うんだよ」


「強さだけを考えればそうかもしれないっすね」


……ハンターも傭兵も確かに多少は頭を使うだろうけど、職業上……多少の粗っぽさは許容範囲。

よっぽど考える頭がない正真正銘の馬鹿でもない限りは、普通にやってける筈だ。


いつ死ぬか分からない恐怖感を常に感じる生活になるかもしれないけど。


「盗賊なんてさ……なったところで、大して楽しい人生にならないと思うんだよな~~」


盗賊になれば、よっぽど変装や隠蔽技術に特化していなかったら街に入れない。

飯だって自分たちが作らないといけないだろうから、料理のアビリティを持ってる奴じゃなきゃ、本当に良い料理は食えないだろ。


他にも諸々……盗賊業なんてやってなければ楽しい思いをしながら生活出来ただろ。


「俺はこんな外道な気持ちなんて分からないっすけど……あれなんじゃないっすか。単純に毎日色々と考えて生きるのが面倒になったんじゃないっすか」


「……シュラの言うとりかもしれませんね」


「考えて生きるのが面倒……思考を放棄したかったってことか?」


「思考法を放棄はいき過ぎな気がするっすけど……盗賊になれば殺して奪って。それだけを考えれば良いから楽だと思ったんじゃないっすか」


もしかしたらこいつ……オルバに壮絶な過去があり、仕方なく盗賊になったのかもしれない。

でも、仮にそうだとしても盗賊としてやることはやってたんだし、同情する余地はないか。

義賊って感じでもないしな。


オルバの首を斬って先程と同じく傷口を焼いて止血。

最後にこいつの死体を埋めて、死体処理は終了。


「メリル、こっちは終ったぞ」


「死体処理、ありがとうございます。こちらの方は見ての通りエルフ……名前はエリサさんです」


「どうも、一応このメンバーのリーダー、ラガスです」


「あなたが……いえ、年齢は関係無さそうね」


うん、やっぱりこんな言葉が一団のリーダーってのは違和感があるよな。

まぁそんな事はどうでも良くて、意外と俺と……男性と話せるみたいで一安心だな。


「ちょっと質問なんですけど、弓や短剣とかは使えますか?」


「え、えぇ。これでも一人で今まで旅をしてたから弓が一番得意だけど、武器は一通り使えるわ」


マジか。それは……普通に考えて凄いよな。

時間が俺ら人族よりも長いから、案外それが当たり前なのか?


エルフの事情は知らないからどっちか分からないな。

って、今はそんなことどうでも良いんだ。


もう一つ確認しておかないと。


「エリサさん、エリサさん以外にこのアジトに囚われている人はいますか」


「多分、私だけの筈よ」


囚われてたこの人がそう言うなら、そうなんだろうな……まっ、とりあえず出る前に気配感知とか使って調べてから出よう。


盗賊たちの実力がある程度あったから、それなりに貯め込んでいるとは思っていたが、宝物庫らしき場所を調べると本当に色々とあった。


「……なぁ、なんで絵画があるんだ?」


「誰かが絵画を運んでいたから……としか言えませんね」


これを奪った時、多分だけど盗賊たちもどうすれば良いのか迷っただろうな。


「ラガス、これ」


「ん? それは……どっからどう見てもワインだな」


盗賊たちの趣味なのか、他の武器とかと比べて随分と外見が綺麗だな。

とりあえず、盗賊たちが溜め込んでいた物の殆どは俺の亜空間にぶっこんでからアジトの外に出た。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る