いき過ぎた感情

「そ、そうかそうか……なるほど。うむ、きっちりと制裁を行えたわけだな」


「えぇ、バッチリ制裁という名のに相応しいダメージを与えることが出来たと思います」


なるべく表情を変えず、普段通りにしてるつもりなんだろうけど……ちょっと顔が引きつってるな。

後ろに立ってるメイドさんも「そこまでやったの!?」みたいな感じで一瞬ではあるけど驚いてたし。


「それだけ一対一の戦いで叩きのめされたのであれば、プライドが折れ……セルシア君への想いも砕ける。というのが普通だが……」


あっ、この感じ……俺たちがアルガ王国の王城を出た後に起った件についても、予想ではあるが聞いてるみたいだな。


「その件に関してなのですが、どうやらアルガ王国の第三王子はまだまだセルシアへの想いを断ち切れておらず、執着しているようです」


「そのようだな……それだけセルシア君のことを想い、惚れているということになるが……二人にとっては迷惑でしかないな」


「はい。とても、大変に、凄く、迷惑です」


「なるほど。今のところはまだ何もないが、ややストレスになっている様だな」


そうですね。まさにその通りですよ。

向こうの王城に着いた時も、絶対に会いたくないオーラが出てた。

そしてアルガ国王に向かって、俺との対決が始まるまで絶対自分の方に来ないようにしてくれって頼んだからな。


もし、その忠告というか警告を無視し、あの手この手を使って会いに来たら……いったいどうなったことやら。

多分近づこうと走ってきた瞬間に細剣でハチの巣にされるか?


それともフェリスさんが不審者が来たと判断して、とりあえず気絶させられる?

もしくはディザスターの連中がサクッとやってしまうか?

いやいや、さすがにそれはないか。あいつらもどの面が第三王子かぐらいは調べてるだろうし……そんな面倒な状況を起こすほど頭は悪くない筈だ。


「まさかセルシアに会いたいがために、王城内で暴れるとは思いませんでしたよ」


「……行き過ぎた恋愛感情、といったところか。ラガス君の口からその話を実際に聞くと今後、彼が危険人物になる可能性が高くなる、という話が現実味を帯びてくるな」


ドレッグさんたちから同じ報告を受けてると思うんだが……実際に戦った俺だからこそ報告に意味があるのか?


なにはともあれ、俺を潰すのに暗殺者とかを使わなかったとはいえ、ガチガチに装備をマジックアイテムで固めてきた点を考えれば……セルシアを手に入れる為には罪すら恐れない。

そんな結論に至ってもおかしくないんだよな、俺の中ではって話だけど。


「腐っても第三王子なので、国境を越えてセルシアに会いに来る可能性が、その……俺の中では全く否定出来ません」


「うむ、同じ意見だ。今回の一件を考えれば当然監視の目が付くだろうが、それでも無茶を押し通せば国境を越えてくるかもしれない……王城からいなくなった時点で、こちらに報告が届くとは思うが」


そっか、普通に考えればそうなるか。

いきなり王城から抜け出してどこかに向かうなんて、アルガ王国の第三王子に限ってはなんの為に抜けたのかバレバレだもんな。


バカ王子がこちら側に来るにしても、周囲にバレないように移動することを考えれば、バカ王子が王城を抜け出してそっちに向かったかもしれないって報告が届くのが先か。


「だが、仮にアルガ王国側から報告があれば警戒レベルを上げなければならないな」


「そうですね……できれば、第三王子がセルシアと接触する前になんとかなると嬉しいです。なっ、セルシア」


「……うん。そう、ね」


せ、セルシアさ~~~ん。

ちょっとお顔が怖いですよ~~~~。


ほら、国王様の前なんだからもっと柔らかくしようぜ。


この調子だと本当に接触すれば、問答無用で斬り裂きそうだ。

向こうとしては処分してくれた方が嬉しいのかもしれないが、総合的に考えれば王族を処分するのはよろしくない。

だから、本当に国の方でなんとかしてほしいよ、マジで。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る