その女ではなく

「それで、国王様。一つ自分から、今回の件とは関係ありませんが一つ提案があります」


「ほぅ……面白そうだな。是非とも聞かせてほしい」


まだ何も言ってないのに面白いと決めつけられるのは困るんだが……まぁ、良いか。

多分考えてる通り、面白いことではありそうだし。


「ガルガント王国とアルガ王国の二か国で、大会を行うのはどうでしょうか」


「……それは、今回の一件で少々罅が入った関係を修復するための親善試合……という訳ではなさそうだな」


「はい。今回の件に関して俺はもうそこまで気にしていません」


「私も、もう……気にしてません」


本当かい、セルシアさんや?

未だに見つけたら斬ってやりたいって顔してるけど……とりあえず、俺たちの目の前に現れなければ大丈夫そうか。


「生徒たちに国内で行われる大会ではなく、他に有力者に己の力をアピール出来る場所があればと思いまして」


「なるほど、確かに生徒たちにとっては良い機会だ……ただ、本当にそれだけか?」


うっ……やっぱり俺がこういうことを進言すれば、他に何か考えてるんじゃないかと疑われるよな。

でも、別にそんな怪しいことは企んでない。


「向こうに滞在してた時、第三王子の同級生と模擬戦をしていました」


「あぁ、そうらしいな。結果は殆どラガス君たちが勝利したらしいじゃないか」


「え、えぇ。一応そうですね」


本当にバッチリ情報は伝わってるみたいだな。


「ただ、それでも向こう側の生徒たちが持つ実力には感心しました」


「こちらと同じぐらいの実力を持っているということか? いや、それはあり得ないか。ラガス君に勝てる学生はこの世にいないだろうからな」


「お褒め言葉ありがとうございます。しかし、それでも向こうの生徒たちと戦う機会があれば……是非大きな舞台で戦ってみたいと感じました」


アルガ王国の生徒たちのトップクラスはどれぐらいの実力を持っているのか。

二年生、三年生になれば当然実力は上がる。


本当のトップクラスはどれぐらい強いのか……なんだかんだで戦うのは好きだからな。

イーリスみたいな面倒な奴は嫌いだけど。


「それに、自分やセルシアが在学している最中に大会を行えば……こちら側が圧倒出来るのは眼に見えています」


「……ふ、ふふふ。君は本当に面白い。ただ熱いだけではなく、客観的な視点も持っている。確かにラガス君、そしてセルシア君が持つ実力は三年生にすら勝る」


「国王様、一つ進言させていただきます。こちらの主力メンバーには、必ずもう一人……勝利をもたらすであろう生徒がいます」


「ふむ、その様な一年生がいたか? もしやリザード家の令嬢であるイーリス君のことか?」


「えっ、いや……ま、まぁそうですね。遠距離戦であればあいつもトップクラスの実力を持ってるので、並みの相手であれば完全に圧倒出来ると思います。ただ、自分が主戦力になると考えている生徒は他にもいます」


遠距離攻撃だけであれば、確かにあの面倒女……いや、もしかしてメンヘラ女?

セルシアに対してかなり意識してるっぽいから、本当にメンヘラか?


じゃなくて、今はそんなことどうでも良いんだよ。

アサルトタイガーファングとかを考えれば実力は超一級だが、接近戦であれば不安が残る。


「その人は、私に近い実力を、持ってます……いえ、真剣勝負なら、どうなるか分かりません」


「ほほぅ~~~、セルシア君がそこまで言う人物がいたのか。大会には出ていなかったが、短期間で急成長したということか」


……随分と評価してたんだな。

あいつの努力と決闘を観てたから、そうなるのは当然か。


模擬戦であればセルシアの方に分がありそうだが、確かに真剣勝負となれば……どっちかが勝つか分からないな。


「色々事情がありましたが、自分たちがまだ残っている代に大会を開催できれば、ガルガント王国に多数の勝利を捧げることができます」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る