五人の近衛騎士
ドアをノックされる音が聞こえ、メリルが速足で向かってドアを開けた。
「近衛騎士の方々ですね。お待ちしておりました」
「これはどうもご丁寧に。それで……あなたがラガス殿、で宜しいですね」
おっちゃんと呼べる近衛騎士が俺の方に眼を向けてきた。
おっさんに見つめられても嬉しくないんだが……ってそんな冗談言ってる場合じゃないか。
「えぇ、どうも。ラガス・リゼードです。今日からアルガ王国に向かって帰ってくるまでよろしくお願いします」
「いやいや、こちらこそよろしく。君に会えただけでも光栄だよ」
「えっと……そうなんですか?」
「私を含めこの五人は君が大舞台で活躍する様子を見ていた。属性魔法のアビリティが使えないという状況で、参加者の中で圧倒的に飛び抜けた結果を残したラガス殿を、私は尊敬している……是非、握手してもらえないか」
「は、はい」
あまりにも突然の要望に驚かされる。
だってそれなりに歳がいってる……といっても三十代前半か。
それぐらいの騎士に尊敬しているって言われたら、驚くなってのは無理な話だろ。
「……ふふ、本当に鍛えてるんだな。おっと、自己紹介がまだだったな。私はドレッグ・バーマント。今回の護衛でリーダを務めさせてもらう」
「俺はオルア・アルバレス。きっちり仕事を果たさせてもらうぜ」
「私はサリナ・シーザス。オルアと同じく、しっかり守らせてもらうわ。よろしく」
「ヤガス。オーウッド。接近戦は出来るが、どちらかといえば魔法がメインだ。よろしく頼む」
「フィーラ・シラスタです。ヤガスさんと同じく接近戦は出来ますが、魔法メインで働きます。回復魔法も使えますので、怪我をしたら直ぐに言ってくださいね」
……全員強いな。当たり前のことだけど、強い。
ヤガスさんとフィーラさんはあまり接近戦が得意じゃないみたいなこと言ってるけど、学生レベルは完全に超えてるだろうな。
それを考えれば、メインの魔法による攻撃や防御が期待できる。
「それでは、そろそろ馬車に乗ってアルガ王国に向かいますが……準備はよろしいでしょうか」
「えぇ、問題ありません」
既に全員準備は万端。
特別寮から離れ、学園の門を出ると……そこには立派な馬と豪華な馬車があった。
「えぇ~~……超豪華だな」
「ラガス殿とセルシア殿を乗せる馬車ですからね。そこら辺の物を使う訳にはいきません」
「そ、そうですか。それは有難いですね」
箱? を引く馬はどう見ても普通の馬ではない。
あれは確かバレッドホース……Cランクの魔物だったよな。
実家にいる頃、数回だけ倒した記憶がある。
馬のくせに弾丸の様な突進でこっちを潰そうとしてくる……そんな馬が引っ張ってくれるのは心強いな。
「うわ……いや、本当に凄いな」
箱の中は外見よりも広かった。うん、本当に広い……凄いという言葉しか出て来ない。
「ラガス坊ちゃま、凄いと思ってしまうのは仕方ありません。私も正直超驚いています。ですが一旦座りましょう」
「そ、そうだな」
あまりにも凄過ぎて呆然としてしまった。
でもメリルの言う通り仕方ないよな。
「あらあら、中々の作りですね。おそらく空間魔法を持つ超凄腕の錬金術師が長時間かけて作ったのでしょう」
「超凄腕の錬金術師、ですか……俺にはちょっと造れそうにないですね」
休日であれば今でも昔倒したモンスターの素材や鉱石を使って魔靴を造っているが、あまり他の道具には手を出してないからな……てか、そもそも空間魔法を持ってないからこんな凄すぎる箱は造れないか。
「そうでしょうか? ラガスさんが造った魔靴、あれはそうとうな腕前がなければ造れません。空間魔法さえ習得出来れば、この様な箱やマジックポーチやバッグを造れると思いますよ」
「そ、そうですか?」
長年生きてるフェリスさんにそう言われたらもしかしたらって思うけど……空間魔法を習得出来るかどうかなんて、それは本当に運次第というか才能による問題というか……あっ。
「……ラガス、ちょっと悪い顔、してる。何か良いこと、思いついたの?」
「あぁ……そうだな。とびっきり良いことを思い付いた」
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