俺たちを守るのが仕事

「ラガス坊ちゃま、起きてください。そろそろ起きないと出発の時間に間に合いませんよ」


「……おう、分かった」


アリクからは色々と心配され、クレア姉さんからは相手が王族だろうが何だろうが、不慮の事故は起きてしまうと言われた夜……二人の意見を頭に入れてからベッドに入って寝た。


明日からアルガ王国に行くというのに、意外にもあっさり寝ることができた。


「朝ご飯はがっつりした物で大丈夫ですよね」


「あぁ、がっつりで問題無い」


着替えて下に降りると、既に俺以外は全員起きていた。

俺が最後みたいだな……相変わらず朝は弱いな。


「おはよ、ラガス」


「あはよう、セルシア。調子はどうだ?」


「問題無い、よ。ラガスはどう?」


「俺も問題無い。寧ろ調子良いと思う。面倒な敵が来てもぶっ飛ばせる気がする」


「その気合は第三王子と戦う時まで取っておいた方が良いんじゃないっすか」


……それもそうだな。よくわからん敵に全力出してもしょうがない。

それにしても、俺の朝飯は朝から肉料理……メリルは俺のこと良く解ってるな。


前世を考えれば、朝から肉料理なんて胃にきつ過ぎるって思うかもしれないけど、美味いから問題無く喉を通る。

ただ、これだけ肉が美味いと米が欲しくなる……何処にあるんだろうな、米。


多分あると思う……というか、あると信じたい。


「それで、後一時間後ぐらいに近衛騎士が来るんっすよね」


「……そういえばそうだったな」


国王様が念の為用意してくれた近衛騎士。

近衛騎士が五人もいれば、盗賊団に襲われようとも勝手に対処してくれるよな。


まぁ……うちには超最強のフェリスさんがいるから、盗賊団ごときにビビる必要はないけど。

なんなら、平均的な実力しかない盗賊団であればルーフェイスだけでも楽勝だ。


ただ、近衛騎士と一緒に行動することで面倒な連中から襲われる可能性は減るよな。

明確にアルガ王国を疑ってるって証拠ではないけど、アホなことをしても無駄だぞっていう牽制にはなる筈だ。


近衛騎士の誰かがアルガ王国に買収されてたりしたら話は変わってくるけど……まさかそんなことはないよな。


「ラガス、朝……体動かす?」


「ん~~~、今日は良いかな。一時間後ぐらいには移動するし……もしかしたら、道中の間に動くかもしれないしさ」


「なるほど、分かった」


「ラガスさん、確かに道中でモンスターや盗賊に襲われる可能性はあると思いますが、あまり前に出過ぎると近衛騎士の方々の仕事を奪ってしまうことになりますよ」


あっ……そうだよな。近衛騎士の人達はアルガ王国に着いてから俺たちを面倒な敵から守るだけじゃなくて、モンスターや盗賊からも守るのが仕事。


確かにその仕事を奪うのは良くないか。


「私はラガス坊ちゃまの指示に従いますよ。あまり実戦から離れていたら勘が鈍ると思っているなら、事情を近衛騎士に説明すれば戦闘のチャンスは譲っていただけるでしょう」


「……どうしようか迷うな。実戦と模擬戦では感覚が違うからな」


いつも行っている模擬戦ほど充実した実戦が行えるか分からない。

それなら休憩時間や、夕食を食べ終えてから食後の運動と称して模擬戦を行うのもありだ……どちらにするべきか迷う。


「俺はどっちでも良いっすよ。多少の勘は鈍ってても、そう簡単にやられるつもりはないんで」


「私も、簡単にやられないから、どっちでも良い」


「模擬戦の相手なら私が担当しますよ」


フェリスさんが模擬戦の相手になってくれるなら、十分過ぎるな。

良い機会だから近衛騎士の人たちとも軽く手合わせしてみたいけど、さすがに俺たちを守るのが仕事である人たちのスタミナをむやみに減らすのは良くないか。


「ふぅ、美味かった」


「おかわりは大丈夫ですか」


「あぁ、大丈夫だ、これ以上食べ過ぎると移動してる最中に腹を下すかもしれない」


移動中、もしくは戦闘中に腹を下すのはシャレにならない。

腹八分目にしておかないとな。


「……そろそろ来たっぽいな」


美味い朝食を食べ終わり、食休みをしているとようやく五人の近衛騎士たちがやって来た。

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