不慮の事故で済む?

「ぶっ殺しはせずとも、模擬戦や決闘になればボコボコにするのは確定なんだろ」


「あぁ、勿論。俺からすれば理不尽な要求をぶつけられたんだし、そのくらいやっても良いだろ」


「それはそうだが……お前の場合、勢い余って殺してしまわないか?」


勢い余って……それは大丈夫だと思う。

それなりに手加減する技量はあるし。


「その辺りは大丈夫だ」


「本当か? 感情が爆発すれば、頭では解っていてもそのあたりのコントロールをミスしてしまう可能性が出てくると思うぞ」


「……確かに絶対にないとは言い切れないな」


今は大丈夫だけど、第三王子に会った時……向こうの態度次第では感情が暴走するかもしれない。

いや、ほぼほぼ暴走するだろうな。


その場でバトルを始めるようなことはないと思うけど、模擬戦や決闘が始まったらブレーキが壊れてやってしまうかもしれないな。


第三王子なんだからそれなりの強さを持ってると思うから、そう簡単に死なないとは思うんだけどな。

仮に俺と本当に戦うことになったら、それなりのマジックアイテムとか身に着けて挑むだろうから……大丈夫だと思うんだけどな。


「まっ、なんとかなる筈だ。向こうも俺と戦うならある程度準備するだろ」


「ラガス相手に準備なしで挑むのは自殺行為だ。でも、向こうはお前の実力を知らないんだろ」


「それはそうだけど……俺が貴族の令息令嬢が参加するトーナメントで優勝したって情報とかは伝わってると思うんだけど」


「それは伝わってるかもしれないが……向こうの捉え方次第だと俺は思ってる」


属性魔法を使えないことも同時に伝わってたら、かなり俺のことを嘗めてるかもしれないな……アルガ王国がどれだけ属性魔法を重視してるのか知らないけど、確かにトーナメントで優勝したとか団体戦で優秀な成績を収めたとかそんな情報がフェイクじゃないかって思われる可能性も出てくる。


第三王子は俺のことが大っ嫌いだろうから、その穴を知って大層喜んでるのかもな。


「良いんじゃないの? 死んじゃったら死んじゃったらでさ」


「……いや、クレア。さすがにそれは不味いから。ラガスに理不尽な喧嘩を売った相手だとしても第三王子だ。模擬戦、決闘の相手だとしても死んだらうっかりやってしまいましたでは済まない」


「でも、第三王子なんだから死んだってそこまでアルガ王国の土台に響くことはないでしょ。政治の道具が減るのはアルガ王国としては痛いかもしれないけど」


政治の道具……政略結婚とかそういう感じに使うことか。

確かにアルガ王国の中で誰が次の国王になる順位が高いのか知らないけど、今回みたいな問題を起こすぐらいだし……序列は低そうだな。


「それに模擬戦じゃなくて、決闘しろって申し込まれたらそれはもう不慮の事故ってことで済むんじゃないの? だって決闘よ。全力で戦った結果相手が死んでしまう可能性だってあるじゃない」


「そりゃそうだけどよぉ……やっぱ俺はとりあえず生かしておいた方が良いと思うけどな」


うん、アリクの考えは間違ってない。

俺とクレア姉さんがちょっと過激なだけだ。


クレア姉さんの決闘だから結果的に片方が死んでも、それは不慮の事故って意見も間違ってはいないけど……本当に殺してしまったら父さんや国王様に迷惑掛けるよな。


「一応そのあたりは気を付ける。勢い余って殺してやりたい気持ちはちょっとあるけど、やっぱり腐っても第三王子だ。殺せしたら殺したらで厄介事になるのは確実だからな」


「ラガスは優しいわね。あなたがそう決めたなら私はもう何も言わないわ……けど、向こうで何かしら厄介事が起きて、フェリスさんが第三王子を殺しちゃったり……なんて事態は起きないわよね」


……おっと、それは考えてなかった。

でも、そんな暴れるつもりはないって本人が言ってたし……うん、大丈夫だよな。


「フェリスさんは俺たちよりも長い間生きてきた大先輩だ。殺さずにどうこうする術は持ってる筈だよ」


第三王子。もしくはその側近とかが問題を起こした結果、どんな天罰が下るのかは知らないけどな。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る