そんなつもりはなかったが

「結局はそうなるかもしれないな。でも、向こう本当に暗殺ギルドの連中を使って俺を消そうとすると思うか?」


『……表面上、アルガ王国とガルガント王国は有効的な関係を築いているが……お互いに潰せるなら潰したい国ではある』


マジかよ……俺が思ってたよりも結構バチバチな関係なのか?

そんな国に行くのかよ……そりゃ国王様も礼を豪華にしてくれる訳だ。


『しかしマスター、直ぐに戦争が起こるほど仲が悪い訳ではない。もし今回の件でマスターに危害を加える、もしくは殺せば……それは完全にガルガント王国への宣戦布告となる』


「そりゃそうだろうな。一応公爵令嬢のパートナーだ。そんな俺を殺せば一大事……ガルガント王国もなぁなぁで終わらせはしないだろ」


しないよな……まさか俺が死んで、国とか利益的なあれで終わらせはしないよな。

ちょっとそこら辺心配になってきたな。


『とにかく、暗殺ギルドの連中がマスターを襲う可能性は限りなく少ないかと』


「それなら良いんだけど……貴族の中には、戦争を起こしたいと考える馬鹿もいるんじゃないのか」


『むぅ……そうだな。そんな馬鹿なことを考える者がいないとは断言出来ない』


そんな事をすればトカゲの尻尾切りされると思うが……正真正銘の馬鹿はそういったことを考えられないんだもんな。

俺としては戦争なんて御免だし……仮に暗殺者が来ても、潰す。


そしてその責任をアルガ王国に押し付けて、たっぷり礼を貰えればそれで良い。


「まぁ、とりあえず俺たちが死ぬことはない筈だ。だから戦争が起こることはないと思ってくれ」


『それはこちらとしても嬉しい。マスターが変わって、そうそうに亡くなられると困るからな』


「元々マスターになんてなるつもりはなかったんだけどな」


ただ、国一番の暗殺ギルドの力が欲しかった。

その力が手に入れば、この国でかなり生きやすくなる。


『俺たちの前で圧倒的な力を見せた。マスターになる理由はそれで十分だ」


「分かった、それに関してもう文句は言わない。とりあえず、明後日の朝からアルガ王国に向けて出発する」


『了解、ゼンスたちに伝えておく』


ふぅーーーー……やっぱり俺が暗殺ギルドのマスターって実感はないな。

いや、お飾りのマスターだし、変に考える必要はないか。


「……ラガス、誰かと話してた?」


「セルシア……」


もしかして、ガイとの会話を聞かれていたか?


「ちょっと知り合いとな。ほら、明後日からアルガ王国に行くだろ。国王様から万が一という場合あるかもしれないって言われたからさ、万全を尽くした方が良いだろ」


「そう、ね。でも、私に何かあったら、多分……怒り狂って、絶対に許さない、と思う」


「は、はっはっは……それは恐ろしいな」


もし、仮にそうなったら俺が上げた魔靴を存分に有効活用してくれそうだな。

あれをフルに使えば大量の敵を抹殺出来る……じゃなくて、そうならないのが一番なんだよ。


「大丈夫、だよ。多分、向こうもそんなに、考え無しじゃない、よ」


「国のお偉いさん達はそうだと思うけど、色々と欲が眩んだおバカさんが暴走するかもしれないだろ。そういった奴らにきっちり対抗する為に、ちょっと知り合いに連絡してたんだよ」


「そうなんだ……もしかして、ラガスは結構、友好関係が、広い?」


「そ、それはどうだろうな? 別に広くはないと思うぞ」


俺が深くつながっている組織なんて、ディザスターだけだし。

他の俺と友好関係がるというか、繋がってる組織や権力者はいない。


だが、ディザスターは俺の手札の中で大きな存在だ。

俺のリスクを極限まで消して汚れ仕事を行える。


「それに……明日、最強の助っ人が来てくれる」


「夕食の時、話してた。その人、ラガスが最強って言うほど、強いの?」


「…………俺が持つ全ての手札を使ったとしても、勝率はゼロに近いだろうな。精々数パーセント」


「……そんなに? よく、そんな人と仲良くなった、ね」


「まぁ、偶々だ。本当に偶々知り合ったんだよ」


あれは本当に偶然だったな。

ルーフェイスを助けたらそのまま自然と知り合ったって感じだよな。


「そうなんだ……ラガスが強いって言うなら、頼りになる」


「本当に頼りになるよ。とりあえずそういう訳だから、なにがなんでもセルシアは絶対に守るから」


「……有難う」


ッ!!! やっぱりその笑顔は反則だ。

絶対にその笑顔で無意識に多数の男を釣ってしまったんだろうな。

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