それって結局は

王城から戻り、夕食までいつも通り過ごした後、ベランダに出て亜空間から通信用の水晶玉を取り出す。


「ガイ、今大丈夫か」


『あぁ、大丈夫だ。それで、何か厄介事に巻き込まれたのか、マスター』


……こ、今回の件はまだ漏れて無い筈だよな?

なのに厄介事に巻き込まれたって……ちょっと鋭すぎないか。


「ま、まぁそうだな。実はな……アルガ王国の第三王子に絡まれてるんだよ」


『……アルガ王国の第三王子がガルガント王国に入国したという情報はないが』


「実はな、簡単に言うと第三王子がセルシアのパートナーに俺が選ばれたことに納得出来ていないっぽいんだよ」


『マスターのパートナー……あぁ、なるほど。大体状況は把握した。そういえあばアルガ王国の王子の中で一人、マスターのパートナーであるセルシア嬢に惚れているという情報をかなり前に入手したが……その熱が再熱したという訳か』


第三王子がセルシアに惚れていた情報は得ていたのか。

さっさと諦めてくれてたら嬉しいんだが……個人の気持ちだから仕方ないと言えば仕方ないんだよな。


ぶっ飛ばして呪うことに変更はないけどさ。


『そうか……マスターの周りは中々落ち着かないようだな』


「不本意ながらそうみたいなんだよ。それでさ、一応俺が用意できる手札は大丈夫そうなんだけどさ、念のためそっちから少し人を貸してほしいんだよ」


『そういう事なら問題はない。国境を越えて活動を行うことは少なくないからな。そうだな……ゼンスをリーダーにしてもう数人付けよう』


「ゼンスっていうと……あの気の良さそうなおっちゃんか」


『そうだな。その認識で合っている……だが、ゼンスは強いぞ。俺達の中でも強さはトップクラスだ。その分諜報関係は腕が下がるが、その分は他の奴らで補う』


「へぇ~~、それは心強いな」


確かにあれはただ優しいだけのおじさんって感じじゃなかったもんな。

今回は諜報よりも俺の周りの人を守ってほしいってのがメインだから、実戦的な実力に特化した人が来てくれるのが有難い。


『ただ、王城の中に入って周囲を警戒するのはさすがにリスクが大き過ぎる』


「そこに関しては大丈夫だ。王城での護衛に関しては俺が用意した切り札に活躍してもらうから」


『そうか、すまないな。王城に入ればアルガ王国専属の暗殺集団もいるだろうから、俺たちとマスターの関係が仮にバレた場合、国と国の問題に発展しかねない』


「……それはだけは絶対に避けたいな」


俺と国なら……いや、それでも最低限、セルシアには迷惑を掛ける。

元々頼もうとは思っていなかったが、ゼンスたちに王城での護衛は頼まないのが吉だな。


『俺としても国との衝突は避けたいところだ……マスター、一つ提案なんだが』


「なんだ?」


『俺たちディザスターにそうしたように、アルガ王国の暗殺ギルドのトップを掌握したら良いのではないか』


……なるほど。

いや、なるほどって納得しちゃうのは良くないな。


でも……そうしてしまえば、アルガ王国で起きた問題に関わる時、大いに役立つよな。

とはいえ、そこまでアルガ王国に何度も行く予定がなければ、関わろうとも思わない。


「一瞬良い案だとは思ったが、そもそもアルガ王国と関わろうとは思っていない。それに、アルガ王国でトップの暗殺ギルドを掌握してしまったら、それこそ激突しそうじゃないか?」


『……うむ、そうかもしれないな。少々考えが甘かった。だが、実際にマスターたちを襲ってきた裏のギルド連中はどうする? 望みとあれば、襲ってきた連中は殺しておくように伝えるが』


「あぁ……それに関しては、俺が出向くよ。二度と変な気を起こさないようにきっちり示しておいた方が良いだろ」


『そうかもしれない。そうかもしれないが、それでは結局向こうの裏ギルドの連中を掌握することにならないか?』


あっ…………確かに、そうなる、か?

でも報復の役割をフェリスさんに任せるわけにはいかないし、やっぱり俺が自ら乗り込んで忠告しないと駄目だよな。


まぁ、そうなったらそうなったらで仕方ないよな。

暗殺ギルドの連中が仕掛けてきたってことは、アルガ王国の連中が仕掛けてきたのと同じ。


その力を俺に奪われても……しょうがないよな。

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