それなりに可能性が高い
「それと……多分だけど、リーベの実家が、アザルトの実家に賠償金を、請求すると思う」
「賠償金…………まぁ、面子を潰されたってことを考えれば妥当か」
長男ではないとはいえ、侯爵家の令息が男爵家の令嬢にフラれた。
しかも正当な理由はなく、単純に他に好きな男がいたから。
侯爵もこの話を聞いたとき、絶対に唖然としただろうな。
「勿論、それも二人に責任を押し付けて欲しいと、頼み込む」
「妥当といえば妥当だよな。もう少し頭を使えば良かったのに……って言っても、もう遅いか」
「うん、もう遅い」
しかし賠償金か……いったい幾らになるんだ?
直ぐに返せるような金額にするとは思えないし、あまり大金過ぎると回収できない場合もある筈。
それを考えると……黒曜金貨数枚か、もしくは十枚とかか?
いや、普通に考えたら大金だとは思うが……面子と売った恩を考えれば当然の額、か。
でも二人が必ず冒険者として大成するかどうかは、またちょっと話が別だよな。
それに死んだら返す物も返せないし。
ハンターになる道はもう決まったんだろうけど……初っ端から地雷パーティーだよな。
マジでザックスたちが可哀想だ……本人たちの性格を考える限り、絶対に見放さないし。
「素直にリーベを選んでおけば良かったのに……馬鹿だよな~」
「そう、ね。本当に馬鹿で阿呆だと、思う。二学期からは、確実に学園から、消えてる」
……うん、そうだね。学園から消えるよな。
ちょっと声のトーンが恐ろしくて、存在ごと消すのかと思ってしまった。
「リーベは、あいつなら立ち直れるよな」
「大丈夫、だと思うよ」
今はメンタルボロボロかもしれないけど……絶対に立ち直れる筈だ。
てか、この先前を向いて生きてたら絶対に良い女性と出会える。
リーベの中身を考えれば、出会えないはずがないんだよ。
「……あっ」
「どうし、の?」
「いや、その……ちょっと嫌な未来が浮かんだというか」
方法が良くなかった、自分から動かなかったのは良くない。
それは当然だが、自分の意志を貫き通した人だ……ただ、その感情が悪い方向に向いたらどうなる?
「ラガス、ちょっと顔色が悪い。何が、浮かんだな」
「……もしかしたら、アザルトさんがリーベにいずれ害を及ぼす可能性があるかもしれない、っと思ったんだ」
「? それは、無理。現時点で、リーベはかなりの強者。ライドがアザルトの味方でも、私怨にまみれた復讐に手を貸すとは思えない」
ライド君が将来的にリーベと実力が拮抗する可能性は十分にあるだろうけど、そこは不安に思っていない。
ライド君がリーベを襲うなんてことは考えられない。
あれはあれで、一本の筋が通った奴だ。
「別にリーベに復讐するなら、リーベを襲う必要はないだろ。いずれ出会い、生まれる家族を襲って殺せば……結果的に復讐になる」
「……なるほど、そうかもしれない。でも、成功すると、思う?」
「それはその時になってみないと解らない。ただ、リーベ自身が強くても、必ず守りたい人を守れる保証はない……セルシア、当主様に制約としてアザルトさんはリーベと親密な関係者と物理的に、間接的に繋がってはならない。って感じの内容を提案してくれないか」
「それを破れば、賠償金が追加される、って感じ?」
「それぐらいの罰があった方が良いだろうな」
「分かった。絶対に、伝える」
アザルトさんが本当に闇落ちしてしまうのか、その時になってみないと解らないことだけど……可能性はゼロじゃない。
てか、なんならそれなりに闇落ちする可能性がある気がする。
だって……自業自得とはいえ黒曜金貨二十枚ぐらい……もしかしてもっとか?
とりあえず、そんな大金を長い時間を掛けて支払わなきゃならないんだ。
擦り切れる生活が続けば、自業自得で借金生活が続いているという思いが消えてしまうかもしれない。
そんな状態で幸せなリーベを見たら……保っていた常識、理性という意図が切れる筈だ。
明日朝一でその辺りを説明しよう。
元婚約者が自身や関係者を襲うかもしれないと聞かされれば嫌な気分になるかもしれないが、絶対に頭の片隅に置いといてほしい内容だ。
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