三つの技術を習得

「……拮抗し始めたな」


「そうですね。お互いに魔闘気は使っていますが、互角ですね」


「二人共手札を出すのを渋ってるって感じか」


リーベもライドもお互いに剣術のみで攻め合っているが、まだ決定打は生まれていない。


リーベの魔剣を火属性。ライドの魔剣は風属性であり、魔剣の性能を使用した攻撃も繰り出されるが、お互いに素早く状況を判断して対処している。


(……ライド君って、マジで化け物だな)


応援しているリーベも今のところ、ミスなく対処出来ている。

それは素直に凄いと思うが、平民という立場でありながら貴族の令息を相手に互角以上に渡り合っているライドの技量に、感心せざるを得ない。


(俺の場合は自我を持つのがとてつもなく早かった。それにプラスして、練習相手には本当に困らなかった。魔弾、獣・鬼・竜魔法は完全に神から貰った才能だ。それ以外の部分は……いくら俺にセンスや才能があっても、丁度良い訓練相手がいなかったらここまで成長出来なかった。そんな俺に比べて……ライドの環境は決して成長する環境に適していなかった筈だ)


才能はあったかもしれないが、貴族の令息や令嬢の様に幼い頃から英才教育を受けられた訳ではない。

指導者にも、訓練相手にも恵まれない環境で育ちながら特待生という枠を勝ち取った。


(その環境からここまで成り上がるのは、並大抵の努力じゃ無理だ。アザルトさんは自分が幸せにするという執念から来る熱さが彼の背中を押し続けたのか……正確な理由は分らないけど、凄いのは間違いない)


リーベのライバルではあるが、やはりその努力には拍手を送りたくなる。


「チッ!! 中々やるじゃないか……なら、方法を変えてみるか」


重撃でライドを押し飛ばし、距離を取ったリーベは手で銃の形をつくった。


「あれはっ!!」


その攻撃方法はザックスたちも何度も見たことがある攻撃。


ラガスの基本にして最強の飛び道具……魔弾。


「魔弾」


指先に集められた魔力が弾丸となって放たれ、一直線にライドの方に向かって飛んでいく。


「ッ!!!!」


いきなり切り替わった攻撃に驚きながらも、冷静に剣で魔弾を弾こうとする。


だが、リーベはその判断の速さを読み、軌道を変更した。


「なっ!?」


「ただ魔力の塊を放つ……それだけでこいつの名前を堂々と使える訳がないだろ」


遠隔操作、跳弾、回転。

これらをうまく使いこなせてこそ、魔弾という武器を習得出来たと胸を張って言える。


ラガス直々に魔弾を教わったリーベはそう思った。

魔力の弾丸を操る……言葉にすればたったそれだけだが、想像以上に奥が深い。


三つの操作はある程度出来るようになったが、師であるラガスには遠く及ばない。

一度本気の魔弾を見せて貰ったことがあるが……まだまだ足元にも及ばないと実感させられた。


(この一か月でそれなりに強くなった自信はあるが、それでもラガスの技術にはまだまだ追いつかない。だが……こいつの相手なら、今の技術でも十分だろう)


魔弾と剣術。この二つで攻めれば限界突破を発動出せられるかもしれない。


そう思っていたが、二度目に放った魔弾を弾かれ……その考えは甘かったと思い知らされた。


「撃つだけなら……僕にも出来るよ」


「……はっ!!! 上等だ、今は埋められない差を見せてやる」


再び距離を縮めるが、今度は剣だけではなく攻撃手段に魔弾が加わり、戦いは更に激しさを増す。


(ここが一応シールドのある訓練室で良かった)


消滅しなかった魔弾は本人の意志とは関係無い方向に飛んでいくが、張られている結界によって観客の方向に飛んで来る心配は必要ない。


(ライド君まで魔弾を使うか……直接の迎撃は上手いな)


自身に飛んで来る魔弾を近距離で相殺。

他人より優れた反射神経がなければ出来ない芸当だ。


後出しジャンケンに近い要領で攻撃を防いでいる。


だが、全ての攻撃を防げてはいなかった。


(反射神経でリーベの魔弾を相殺するま方法は良い……良いというか凄い。でも、三つの操作の技術はまだまだリーベの方が上みたいだな)


遠隔操作、跳弾、回転。


ライドが反射神経で相殺しても、回転している魔弾の貫通力で貫かれ、威力は落ちながらも皮を切ることが多い。

剣術と魔弾を同時に使う戦い方もリーベの方が慣れており、数分後には徐々に結果が現れてきた。

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