恐れるシチュエーション
「ギギギィ!!!」
「……まぁ、肩慣らしには丁度良い相手、かもな」
「これぐらいなら、俺一人で十分だろう」
王都の外に出てから最初に遭遇したモンスターはゴブリン。
一体だけではなく、合計で四体。
数ではこちらが負けているが、正直絶対に負けない相手だ。
上位種ならともかく、目の前にいる個体は通常種。
確かにリーベ一人で十分な相手だ。
「ふんッ!!!」
「グギャッ!?」
身体強化のアビリティを使用せず、素の身体能力で近づいて前蹴りを放つ。
「……なるほど、確かに威力が上がっている。ただ、刃を出すまでもないな」
通常の蹴りで十分だと判断したリーベは残りのゴブリンを同じく前蹴り、側頭蹴り、跳び蹴りで瞬殺。
やっぱり通常種のゴブリン程度じゃ相手にならな過ぎるな。
「相手にならない、ね」
「そうだな。せめて上位種じゃなかったら実戦相手にならない。どんどん次を探そう」
昼過ぎからの探索だから、早めに適当な相手に遭遇しないと日が暮れる。
なるべく周囲を警戒しながらも、速足でモンスターの探索を続ける。
「……お前みたいな体型の奴は、お呼びじゃないんだよ」
次に遭遇したのはダッシュボア。
Eランクのモンスターで、突進の一撃だけはDランク並みに強い。
だが、方向転換が下手なので、突進さえ避けてしまえば簡単に対処出来てしまう。
「魔弾で一撃、だね」
「あんまりにも警戒心が無さ過ぎるんだよな」
身体強化のアビリティは使っていたけど、体に魔力を纏っていなかったから普通の魔弾で十分に対処可能。
さぁ、次だ次。
「……ラガス、これも違う、ね」
「あぁ、そうだな……頼むから人型のモンスターが襲ってきてくれよ」
スピアフロッグ。
蛙タイプのDランクモンスター。
口から発射する舌は槍の様に鋭い。
ただ、個体によって発射したの方向を途中で変化出来るかどうか変わってくる。
実戦経験を得るという目的ならば丁度良いモンスターかもしれないが、リーベの訓練相手には相応しくない。
まぁ……一回、魔弾を舌で貫かれたのは驚いた。
回転まで使われたら、普通の魔弾じゃ厳しいか。魔力も纏ってたし。
俺たちの相手じゃなかったけどな。
「スピアフロッグは中々美味いが……どうする?」
「……とりあえず、こいつは解体するか」
今日の夕食に加えようと決め、ササっと解体して亜空間に入れて次を探す。
今度こそ良い感じのモンスターと遭遇したい……そう思ってた。
思ってたんだが……これは、ある意味当たりか?
「リーベ、どうする? 一人で戦ってみるか」
「そうだな……最初は一人で戦う。危なくなってきたら手を貸して欲しい。それと……最初から全力で戦った方が良いよな」
「あぁ、油断したら駄目だな」
遭遇したモンスターは確かに人型だった。
ただ……体格はライドより遥かに大きい。
身長は……二メートル半ぐらいか?
ある意味運良く遭遇したモンスターはオーガ。
Cランクモンスターの人型……実戦相手には申し分ないけど、ちょっとキツイ相手かもな。
でも、オーガってもっと大きいと思うんだが……もしかして、まだ生まれてそこまで年月が経っていない個体か。
それなら……リーベが一人で戦っても勝てる可能性はあるかもな。
剣術は得意だが、それ以上にリーベは体術に秀でている。
今も身体強化のアビリティを使用しながら、魔闘気を纏っている。
相手のオーガも身体強化を使っているが、纏っているのは闘気のみ。
とはいえ、純粋な身体能力ではオーガの方が上だ。
何処で拾ったのか……鉄製の大剣を持っている。
Cランクの中でも力に優れた怪力。そしてその怪力で振り回される鉄製の大剣……普通に考えて驚異的な存在だ。
でも……このままいけば、案外倒せそうだな。
焦って攻めることなく、相手の攻撃を避けて攻撃出来るタイミングを見極めて攻めている。
魔弾も上手く使って相手の嫌がるポイントを狙って撃てている。
「……これだけ戦えてたら、決闘でも勝てそう、じゃない」
「実力は確かに上がっている。でも……それだけで勝てる相手じゃないんだよ。俺が怖いのは……相手が戦いの最中に成長することだ。だから……決闘が始まる前に、そんな奇跡を上回る力を身に着けて欲しい」
手札は多く用意した。
体術に関してはとっておきがある。
魔弾も、魔靴も相手の隙間を狙う良い道具だ。
客観的に見て負けないと思う……思うんだが、やっぱりリーベが勝つ光景を観るまで安心は出来ないな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます