思いっきり使うのに慣れる

「これが、切り札の一つ……魔靴だ」


「魔靴……タダのブーツ、ではないんだよな」


魔靴を造り上げた翌日、朝飯を食べたと後にリーベを呼び出し、魔靴を渡す。


外見は普通の似せてあるから、感覚で解る人にしかマジックアイテムだってのは解からない筈。


「履いてみればみれば、使い方はなんとなく解る」


「そうか……それなら、早速履かせて貰おう」


今履いている靴を脱ぎ、魔靴を履く。

うん、やっぱりパッと見た感じは普通の靴に見えるよな。


金属やモンスターの素材を使ってるから少し重さは感じるかもしれないけど、戦闘が出来る人間からすれば使っていて差はない。


「……なるほど、徒手格闘の強化。そして蹴りに奇襲を加える事も出来る……凄いな。これは、ラガスのオリジナル、だったな」


「一応な。一般販売してないから、持ってるのは俺の身内だけだ」


ロウレット公爵の為に造った作品は俺の中で一番良い性能を持った魔靴だったなぁ。


まぁ、あれは単純に公爵様が質の良い素材と魔石等を送ってくれたからだけど。


「そうか……本当に、ありがとう。大事に使わせて貰う」


「いいや、大事に使う必要はない。決闘の一戦でぶっ壊しても良い……だから、絶対に勝てよ」


「ッ……あぁ、勿論だ」


本当に、その戦いで壊れても良い。

その魔靴は決闘で勝つための道具だからな。


「それじゃ、今日昼ご飯食べ終わったら狩りに行こうぜ。確か授業は昼までだろ」


「そうだな。午後は特に予定はない」


「よし、それなら慣れる為にモンスター相手に実戦だ」


別に俺ら相手に試すのもありなんだけど、思いっきり使えはしないと思うんだよ。

どっかでセーブしている部分がある。


というか、俺やメリル達も普段の模擬戦とかは力をセーブしている。

偶にエキサイトすることはあっても「絶対に潰す」って感じの殺気とかは漏れない。

当たり前だけどな。


でも、本当に全力を出せている時ってのは、殺気や本気の戦意が漏れている時だけだ……と、思う。


イーリスを相手にした時、結構イラついてたけど別にコテンパンに潰そうとは思ってなかったしな。

コテンパンに潰そうとしてたら……どうやって戦ってただろう?


そもそも攻撃魔法を使わせずに魔弾だけで一定時間、攻め続ける。

後はひたすら肉弾戦でボコボコにするって感じか。


観客……特に女性からは物凄いブーイングが飛んできそうな戦い方だ。


「分かった、昼に王都の外だな。それで、どういったモンスターを相手にするんだ?」


「……別になんでも良いんだけど、どうせなら人型のモンスターの方が好ましいかな」


ゴブリン、コボルト、オーク、リザードマン……ゴブリンは基本的に小さいし、オークが横幅がデカ過ぎるちょっとあれだな。


できればコボルトの上位種……もしくはリザードマンと遭遇したいな。


ただ、リザードマンはCランクのモンスターだからまだリーベに早いか?

……いや、もしかしたら勝てかもしれないな。


まだ核の強さ的には足りないかもしれないけど、持ってる手札をフルで使えば勝てる筈だ。

魔靴には身体強化の効果もあるし……遭遇したら戦ってみる価値はありそうだ。


「なるほど。仮想ライドにするには妥当な相手だな」


「そういう訳だ。それじゃ、また後でな」


「あぁ」


そうだよ、仮想ライド君には丁度良い相手……ん?

いや……それは、どういうこと?


「ラガス坊ちゃま、急に顔色が悪くなりましたが、大丈夫ですか?」


「……なぁ、リーベはさ……ライド君のことをどうしたいと思う」


「どうって、ぶっ飛ばしたいんじゃないでしょうか」


「俺もそう思うっす。相手の努力は認めていても、自分の婚約者を取ろうとしている奴なんですから……心の底では完膚なきまでに潰したいと思ってるんじゃないっすか」


「だ、だよな……そうだよな」


べ、別にあれよだな。

殺したいとまでは思ってない……よな?


ライド君が持ってる手札も中々にチートだけど、リーベだってここ最近でかなり実力を上げてきてる。


……決闘の最中に、やっちまう可能性は十分にある、か。

模擬戦じゃないから決闘中に死んでも、どちらかに責任はない。


それに、誓約書にも決闘の際に相手を殺してはならない、なんて内容は書いていなかった。


……その辺りは、しっかりと観ておいた方が良さそうだな。

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