いずれは教師に

「授業はどうでしたか?」


「解りやすかったよ。評価の仕方はかなり自分勝手な気がしたけど、授業自体は真面だった」


まっ、基本的に完全に実力主義な点は才能が無い人には辛いだろうけど。


「シュラにはちょっとつまらんかったか?」


「そうっすね……否定できないっす。自分はあんまり錬金術には興味ないんで」


だよな。シュラが興味あるのは鍛冶の方だからな。

でもこの学校に、というか貴族が通う学校に鍛冶科とかあるわけないよな。


鍛冶貴族なんて一家がいたとしても、本当に少数だろうからそんな科を造る必要は無い。

でも……一応聞いてみるか。

生徒が使わないだけで、設備自体は教員か事務員が使う用としてあるかもしれないし。


授業の合間に運良くレックス先生に遭遇し、この学校に鍛冶が出来る設備があるのかを訊いた。


「一応あるが、ラガスは鍛冶もやるのか?」


どうやら尋ねたのが俺だったので俺が鍛冶をやるのかもしれないと勘違いするレックス先生。

流石にそこまで何でも出来やしないって。


「俺じゃなくてシュラの方が鍛冶を出来るんですよ」


「そうかそうか、確かに出来そうな見た目をしてるな。腕力もあって確か鬼人族しか使えない鬼火も使えるんだろ。とりあえず鍛冶を担当している先生に訊かないとな」


「先生の中で鍛冶をしている方がいるんですか?」


「おう、いるぞ。ただ、完全にこの学校に所属してるって訳じゃないんだよな」


完全に所属してはいない? つまり臨時教師って事か?


「その人は趣味で鍛冶をやってるハンターの人なんだよ。んで、その実力と鍛冶が出来る腕を買われてうちで教師をやってるんだが、現役のハンターだから学校に来れない日もあるんだよ」


「なんでそんな人を教師として雇おうとしたんですか?」


「一応ハンターを引退すれば完全に教師になってくれるらしくてな。それに鍛冶が出来るからいちいち外から武器を買う必要が無いんだよ。あの人は担当を持たずにハンター科と対人戦科に顔を出すして必要に応じて生徒の相手をするだけだからな」


「本業としては先生や生徒達が授業で使う武器を造ることなんですね」


「そういうことだ」


その人にとっては有難い老後の人生かもしれないな。


「まだ使えるかどうかは分らんが、とりあえず俺とメリルが錬金術の授業を受けている間、シュラはその先生に鍛冶の授業をしてもらえるか頼んでみるか」


「えっ、いや……それは嬉しいんっすけど、従者として授業中にラガスさんの傍を離れるのは駄目じゃないっすか?」


「でも授業内容的に戦うって事は無いんだから、メリル一人で十分だって。それにシュラだって睡魔と戦うより自分より腕が立つ人から鍛冶の授業を受けている方がよっぽど有意義だろ」


従者が授業中に寝てはならない。みたいなことを従者専用の授業で言われたらしく、シュラは俺が錬金術の授業を受けている最中は寝ないように耐えていた。


俺的に全然寝てもらっても構わないんだけどな。

別にが外側的な評価を気にすることは無いし。


「てなわけで、その先生にはいつ会えますか?」


「今日はいないな。確か明後日には学校に来る筈だ。昼休みの時に職員室で待っとくから声を掛けてくれ。そしたらその先生のところまで案内するからよ」


「有難うございます」


思いのほかシュラの要件は速く済み、放課後になると今日はセルシアとは別行動。

どうやらクラスメートに一緒にスイーツ店に行かないかと誘われたらしく、俺に相談してきた。


別にそんなこと俺に相談せずとも決めて良いんだけどな。

俺とずっと一緒にいるのも良くないだろうと思い、迷うことなく行って良いよと伝えた。


放課後予定が空いた俺はいつも通りメリルやシュラ達と模擬戦を……という訳ではなく、魔靴を製作する。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る