芯に響くものが多い
セルシアは確かに健闘しただが、やはり試験官に勝つ事は出来なかった。
しかし、一撃だけ試験官に攻撃を掠らせることに成功した。
その差は本当に数ミリ。服は完全に斬れていたからな。
雷を纏ったセルシアは速かった。試験官の表情が良い意味で変わる程には速かった。
だが掠らせた一撃以外の攻撃には全て対処していた。
けど力はあれだが、速さに関しては素の状態でかなり全力だった気がするんだが・・・・・・俺の勘違いかもしれな。
ただ今まで戦った受験生の中では断トツに強い。
それは確かだし、他の受験生もそれは感じ取った筈。
さて、採点をしている試験官も良い表情で紙にセルシアの評価を書いているみたいだし、一撃入れるか掠れば評価は上々って事だな。
「・・・・・・解ってはいた。けど、やっぱり悔しい」
「悔しいって思えるんなら、まだ強くなれるって事だろ」
漫画かアニメで聞いた事があったような言葉をセルシアにかける。
漫画やアニメの中にクサいセリフって多いけど、結構その通りだなって思ったり胸が熱くなる言葉ってあるんだよな。
セルシアなら悔しいって感じた後に、それをやる気に変えてもっと強くなろうって努力するだろう。
「ラガス、今のセリフ、ちょっとカッコ良かった」
「そ、そうか? サンキュー。んじゃ、頑張ってくるよ」
「うん、頑張って。でも・・・・・・やり過ぎは良くない、よ」
セルシアは周囲に聞こえない程度の小さな声で俺に忠告して来た。
は、ははは。セルシアまで母さん達と同じ事を言うとはな。
Side 試験官
今の娘は中々良かったな。確かロウレット公爵家の三女だったか。しっかりと公爵の雷を受け継ぎ、それを自在に操ろうと努力している様だな。
今回の試験で多少骨のある奴は何人かいたが、あの娘は圧倒的に抜きんでていた。
刃に属性魔力を纏うことは貴族の子息や令嬢ならばセンスと才能があればこの歳で出来てもそこまで珍しくは無い。
しかしそれを全身に纏い、あそこまで一気に速度を上げるとはな。
身体強化のアビリティは使っていないが、それでも素の状態でそこそこ本気にならねば危うかったのは事実。
末恐ろしいとはまさにこのことだ。
さて、次の相手は長剣を使う小僧か。
「ラガス・リゼードです。よろしくお願いします」
リゼード・・・・・・あの者達の弟か。
両親が元高ランクのハンターだからか、子供全員が周囲と比べて頭は一つか二つ飛び抜けている生徒。
次女のクレアだったか。あの生徒の戦い方に少なからず恐怖を抱いたのを覚えている。
容赦くなく男の第二の命を狙うからな。
さて、その弟である小僧はどれ程の実力を持っているのか、やはり気にはなる。
だが試験が始まってからはそこまで驚く様な事は無かった。
確かに他の子息や令嬢と比べれば冷静な判断で攻撃し、剣だけでなく拳や脚も使って攻撃を行う辺りから戦い慣れている印象を受ける。
剣に己の五体を混ぜて戦う事もそう簡単に出来ることでは無い。
小僧が今まで真面目に努力を積み重ねて来た背景が見える。
しかし、先程戦ったセルシア・ロウレットには劣ると感じた。
他の兄弟と比べても。いや、三男のアリクと近いか?
何かこう・・・・・・個人が持つ武器の中で飛び抜けた長所が無い。
いや、流石にそれは俺が期待し過ぎているだけだな。
そもそもこの歳で完全に自身の才能を開花させている者など殆どいない。
これだけ動けていれば十分に合格点は貰えるだろう。
だが、一つだけ気になる点を解決しておきたいな。
何故、こいつは自身のこれからの人生が決まるこの状況で、熱くなれていないんだ。何故、一切吠えずに闘志を燃やさないんだ。
っと、俺が戦いとはあまり関係無い事を考えている隙に、小僧が駆けた。
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