威厳を失わないように
実技試験を行うグラウンドにやって来たんだが、中々広い。
前世の学校のグラウンド並みの広さがあるな。いや、もしかしたらそれよりも広いかもしれないな。
というか、実戦的な訓練やイベントを行う場所がここだけじゃないってのが俺にとっては驚きなんだが、この世界のそこそこ規模の大きい学園なら当たり前なのか。
広さだけで言えばもはや大学並みだよな。大学に殆ど行ったこと無いから知らんけど。
そして実技試験の内容が俺達とは異なる者もいるので先程の筆記試験を受けていた時よりも若干だが人数が減っている。
「実戦の実技試験でも、遠距離をメインで戦う人と、接近戦をメインで戦う人とで試験官が変わる、らしいよ」
「みたいだな。戦う試験官とそれを記録する試験官も俺達と比べればまさに子供と大人程離れた実力を持ってる、って雰囲気を醸し出してる」
雰囲気だけじゃなく、絶対に強い。
そう確信出来るほどの強さを持っている筈だ。
・・・・・・ほんの一瞬、ほんの一瞬だけ視てみるか。
一瞬だ狼竜眼を使い、一人の試験官を覗いた。
時間には一秒程度だったのでどれ程の数のアビリティを習得しており、どのレベルまで熟達しているのかを全て把握はしきれなかった。
でも、ざっと視た感じでは男の試験官が主に使うであろうアビリティは習得済み。
そんでアビリティレベルも予想より一つ高い。
もしかしてだけど、まだ合格もしていない貴族の子息や令嬢に負けるのは学園に所属する教師としての威厳を失わないように、ここまでレベルの高い教師を試験官として用意したのか。
「皆、流石に集中している、ね」
「そりゃそうだろう。ここでまだ俺に目で喧嘩を売ってるんだったらそれこそ合格する気はさらさらないって言っている様なもんだ」
まっ、今の俺の言葉を聞いて何人か肩振るわせた奴がいたようだから、もうそいつらは頭一つ抜けた馬鹿決定だな。
とりあえず、俺の順番が中程で助かった。
周りの奴らがどれほどの力を持って挑んでいるか解るからな。
自身のこれからが掛かっているこの試験で俺みたいに手札を隠す様な奴はいないだろう。
前半の受験者だけでもある程度の合格ラインは解る筈だ。
「それでは、これから実技試験を行う。俺は刃引きしてある長剣を使うが、お前達は刃引きしていない武器を使うんだ。もし刃引きしてある武器の方が調子が出るならそちらを使っても構わん」
へぇーーー、本当に色々と用意してあるんだな。
受験してくる家の特色をしっているのか、結構な種類の武器が用意してある。
「言っておくが、俺はお前達の何十倍と強く、お前らとは比べものにならない程の修羅場を潜り抜けて来ている。だから一切怯える事無く死力を尽くして俺を倒せ。実技の点数については後ろで待機している試験官が点数を付けている。が、だからといって試験中にあいつの手先を気にする必要は無い。俺を倒す事だけを考えて戦え。説明は以上だ。さぁ、番号順に掛かって来い!!!」
試験官の合図と共に一人の男の子が前に出て、自身の名前を発してから試験官と同じ長剣を使って斬りかかった。
試験開始から大体三分の一の受験生が試験官と戦ったが、誰一人として試験官に攻撃を喰らわせた者はいない。
まっ、流石に実力差があり過ぎるから絶対に無理って話だけどな。
だが試験官さんもしっかりと仕事はしている様で、最初は受験生たちに好きなように攻撃をさせ、ネタがキレたとわかれば攻撃に移って攻撃の回避や受けの評価に変わり、最後は武器を弾き飛ばして喉元に剣先を突きつけられて終了。
そんな事が何度も繰り返され、俺の一つ前の番号であるセルシアの番となった。
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