得意不得意

「というか、お前らの方はどんな内容だったんだ?」


「執事とメイドというよりは、仕える主を守護する人とサポートする人とで内容が解れている様です。なので先程の時間は私とキリアさんがメインに試験を受けていました。シュラとルーンさんは軽い言葉遣いや所作などの確認でした。もっとも、一人しか従者がいない組は両方とも一人で試験を受けるのでしょうけど」


「へぇーーー、確かに同じ従者って立場であっても得意不得意はあるだろうから妥当な内容か。確か俺達の方も次の実技試験はちょっと内容が別れるらしいからな」


「実戦の試験を受ける人が大半、だけど錬金術や、装飾系の試験もある、らしい」


この話を聞いた時は中々良い学園じゃないかと思った。

貴族の出であれば俺みたいな特例を除いて基本属性の魔法を使えるが、全員が全員戦闘に適した魔法を覚えられるかといえばそうでは無い。普通に貴族として暮らしていれば行う機会のない作業が得意なこともある。


なのでこの学園ではそういった生徒達にも相応しい受験内容を用意し、専門の授業もあると聞いた。


流石王都でトップクラスの学園だな。


「そんで、午後からは実技試験か」


「そうっすね。二人ペアの場合は片方を守る様に戦う。要は主人を守れるかどうかの確認っす」


「そりゃ従者なんだからそういった形の実戦をするか・・・・・・シュラ、メリル。俺が言うのは可笑しくなるのかもしれないけど、あんまやり過ぎるなよ。お前らなら普通にやれば合格するだろうし」


こいつらが糸生産、糸操作、城壁のアビリティを使えばマジで教師陣を倒せる可能性がある。

初見でそんなアビリティを習得してるとは思わねぇーだろうしな。


「最もな言葉ですね。私達も気を付けますが、ラガス様もうっかりやり過ぎないように気を付けてくださいね」


「わかってるよ。殆どアビリティを使うつもりは無いし」


「それもそれで目立ちそうな気がしますが」


ぶっちゃけ実戦の実技試験ではどの程度の結果を残せば目立たず合格出来るのか、そのラインが解らない。


あと、この完全に試験を嘗めてるだろって会話は音魔法のフェイクシャウトを使って実際の内容とは大体違う内容を話しているように周囲には聞こえている。


「ラガスは長剣を使うの? それとも素手で戦うの?」


「どっちにしようか・・・・・・素手にしておくか」


「何か理由があるんすか?」


「いや、特に理由は・・・・・・やっぱり長剣にしておく」


素手で戦う貴族の子供ってあまりいないだろうし、長剣の方がオーソドックスだからな。


「流石ラガス坊ちゃまですね。お腹が真っ黒ですね」


「バレたか。だがお前が言う程黒くは無い。せいぜい灰色だな」


キリアさんは俺が何を考えているのか解ったみたいだが、他の三人は解っていないみたいだな。

とりあえず、ある程度の実力を見せよう。余計な事はせずに。


「ごちそうさん」


ていうか、マジで学食美味かった。これが毎日食べられるとか最高だ。

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