これでも前世よりは

「筆記試験はほどほどに頑張って実技試験はしっかりと手を抜くんだぞ」


「あんまり周りの子をビビらせちゃ駄目よ」


「解ってる父さん母さん。んじゃ、行ってくる」


おおよそ学園を受験する子供に向ける言葉では無い内容を受け、俺はシュラとメリルと一緒に学園へ向かう。

ルーフェイスはお留守番という事で今日一日は父さん達と王都を散策。


「旦那様はラガス坊ちゃまの事を良く解っていますね」


「そりゃ血の繋がった親だからな。というか、絶対に受験生に言う言葉じゃないだろ」


「でも、当主様の言う通り筆記試験に関しては満点を取ったとしても一生懸命に頑張ったと捉えられるかもしれませんが、実技試験で圧勝してしまったら否が応でも目立ってしまうっすよ」


「いや、四つのアビリティを使わなかったら実戦の経験数や格の違い的に負けるだろ」


「・・・・・・四つという事は、音魔法は使うんですか?」


やっべ、忘れてた。

基本的にそれも使わないつもりなんだよな。

取っておきの必殺技があるからここぞという時以外は使わない。ただ、一度使ってしまったらどんな魔法かバレそうだけど。


いや、ワンチャン幻影系のアビリティと勘違いされるか?


「いや、武器と体術だけで戦う」


「下手な教師だったらそれだけでも勝ってしまいそうっすけどね」


「流石にそれは貴族の子供が通う学園の教師としてのプライドの関わるから、ある程度の強さを持った教師がそういった戦闘系の授業は担当するだろ」


ただ魔法しかメインに使わない遠距離タイプの教師なら勝てる可能性は十分にあるだろうけど。


「というか、周りにいる奴ら殆どが受験生か」


「その様ですね。みな緊張しているのか随分と殺気立っているように思えますが」


「通う事が出来る学園はここだけじゃないだろうが、王都内でレベルが高い学園らしいからな。通って卒業すればそれだけでステータスになるんだろ」


前世では中学で学歴は終わってるからいまいち想像がつかんが、新卒の社会人なんかには学歴でマウントを取る阿呆とかいたんだろうな。

有名な大学を卒業した事は素直に凄い事だとは思うけど。


「この間ぶり、だな。ラガス」


「おう。この間ぶりだなセルシア」


丁度被ったみたいだな。


「昨日はよく、眠れた?」


「ああ。ぐっすり寝れたぞ。セルシアはちゃんと寝れたのか?」


「布団に入て直ぐには寝れなかった。でも、考え事をしていたら、いつの間に寝てた。特に寝不足では無い、と思う」


「そうか、それは良かったな」


偶然出会い、一緒に行く中で俺はセルシアと話し、キリアさんルーンは俺に一礼した後はシュラとメリルを交えて話している。


普通の光景に思えるが、どうやら周囲の奴らからすればそうでは無いらしい。


「おい、あいつなんでセルシア様と一緒に歩いて喋ってるんだ?」


「あんな顔の伯爵家以上の奴は見た事が無いんだが」


「ふん!! 無礼な奴だ。あんなトロそうな顔でセルシア様と会話をしようなど百年早いというのに!! 一体どこの誰だあいつは」


あっちゃーーーー、まだ受験すらしていないのに随分と恨みを買ってしまったな。

というか、トロそうな顔ってなんだよ。これでも前世の時と比べて容姿は随分とまっしになったと思うんだけど。


「・・・・・・つまらない人達」


「ははは、なかなかキツイ一言だな」


つまらない、完全に興味が無いって意味だろうな。

というか、思った以上に阿呆が多そうだ。


目立ちたくはないが、実力に関して得体のしれない奴って印象を与えられる機会があれば良いんだが・・・・・・そうそう運の良いチャンスは来ないか。


「ここが試験会場か」


受付を済ませ、シュラとメリルは別の試験があるので別れ、現在はセルシアと二人で試験会場に向かっている。

やっぱ周囲からの視線が痛いな。


女子からはそこまで痛い視線は飛んででこないけど、男子から・・・・・・特に顔が良く質の良さそうな服を着ている連中からの視線には殺気が籠っている気がする。


セルシアってそこまで同年代に人気があるのか。

正直認識が甘かったな。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る