無茶はしないでくださいね

「バルンク様としては、ラガス君がセルシアお嬢様とお付き合いするのは賛成なんですか」


「私個人としては賛成だ。セルシアが興味を持つほどの男なんだからな、勿論賛成だ。ただ、公爵家の当主としてはあまり賛成出来ないがな」


「ですが、仮にラガス君がセルシアお嬢様のパートナーであれば?」


「勿論賛成だ」


ですよね。もしそうなれば、侯爵家もは何も文句を言ってこないでしょう。

セルシアお嬢様の婚約者は別かもしれませんが。


「でも、侯爵家の子息はそうなった場合に素直に受け入れられず、ラガス君に戦いを申し込むのではないでしょうか? ラガス君はそういったイベントが嫌いそうですけど」


「セルシアとパートナーになれば、嫌でも目立つのだからそういった面倒なイベントを避けるのは諦めろと言うしかないな。魔靴の感想を手紙に書く時にその辺りもある程度助けはすると書いておこう」


ロウレット公爵家の力ならば大抵の面倒事は解決出来るでしょうが、ラガス君が我慢できずに面倒事を物理的に解決してしまう可能性も無きにしも非ずでしょう。


「さて、次の実験台がやって来たようだな」


バルンク様がそう仰られた瞬間、巨大な岩の球体がこちらに飛んでくる。

ビラッズがそれを粉砕するために前に出ようとするが、それをバルンク様が前に出なくて良いと指示を出す。


バルンク様からの指示に私達は仕える者としては前に出て守らなければいけないのだが、正直この程度の攻撃でバルンク様がやられてしまうとも思えないので、最終的に後ろで待機となる。


「ふっ!!!」


右足で回し蹴りを放った事で岩の球体は四つに切断された。


「やっぱとんでもない切れ味だな」


ビラッズの言う通り、魔靴の刃から放たれた斬撃により斬られた岩の切断面は一切の凹凸が無い程綺麗にな状態になっている。


「オーガが二体か。一体はお前達に任せても構わないか?」


「勿論です」


木々の奥から現れたのは二体のオーガ。

手には何も持っていないのでメインは素手での攻撃。いや、しかし先程投げてきた岩の球体は明らかに自然物では無かった。


片方のオーガはやや皮膚が茶色いな。もしやメイジでないのにも関わらず土魔法を使うというのか?

通常種とは異なるオーガと私達が戦わなければいけないのだが、そんな事をバルンク様に言っても無駄なので諦めましょう。


「ビラッズ、ノエリア。私達は通常のオーガを相手にします。バルンク様の相手は皮膚が少々茶色いオーガでよろしいでしょうか」


「ああ、解っているじゃないかレアース。そちらは頼んだぞ」


「かしこまりました。それではビラッズ、お願いします」


「任せとけ!!!」


こちらへ突っ込んでくる通常のオーガに対してビラッズ前に出て対応する。


「ガァァァアアアアーーーーッ!!!!」


「生きの良いオーガだ、なッ!!!!」


オーガの右拳に合わせてビラッズも右拳を放ち、その衝撃波で空気が揺れる。


「ほぅ~~~。拳が重なる前に身体強化のアビリティを使って拳の強度を上げたか。丸くない判断だったが、闘気を纏った方が良かったんじゃないか?」


拳がお互いに壊れていないところを見ると互角に見えますが、ビラッズの言葉から察するに骨に罅が入ったのでしょう。


「ファイヤーランス」


「飛斬」


オーガが硬直した瞬間にノエリアのは炎槍を、私は斬撃を放つ。それぞれ数は五つ。

ビラッズの方が速く行動していたため、私達の攻撃はビラッズに被弾する事無くオーガに向かう。


しかし腕に罅が入ったところで動きが鈍る訳では無く、後方に下がって避けようとする。


「あ~~あ。拳に闘気を纏って殴って防いだ方が良かったのに」


そんな事を言いながらも自身の考え通りの事が進んだことが嬉しいのか、ノエリアの口角が少し上がっている。


「グガッ!!!???」


私達が放った攻撃の内、計六発は不発に終わりましたが残りの四発オーガに直撃。

オーガが避けるという選択肢を取った時の為に被弾地点をズラシタ事が功を為しましたね。


「相変わらずお前らは器用だなッ!!!!」


今度はビラッズの番ということで彼は拳と脚に闘気を纏い、現状態で文字通り全速力でオーガに突っ込む。

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