必殺技と言うに相応しい

ビラッズの速度に反応が遅れたオーガ。

それからは一方的な展開だった。


闘気を体に纏う。そこまで行動を起こせたオーガだが、纏った時には既にビラッズの拳が体にめり込んでいた。

その一撃では終わらず胸を殴り、腹が凹ませ、上腕の骨を砕き、左足が更に赤みが増すほどの蹴りをぶち込む。


オーガが反撃する瞬間は一寸も無く、体の至る所が赤から赤黒に変わっていき、遂には闘気が解かれてしまった。


「おぅらああああッ!!!!!」


そして最後の右拳が丁度心臓部に決まったのか、そお一撃を喰らった直後に大量の血を吹き出してオーガは倒れ込んだ。


「おっと。ちょっとやり過ぎちまったか?」


「闘気だけとはいえ、全力のビラッズさんの連撃に普通のオーガが長時間耐えられる訳無いじゃないですか」


「同感だ。もう少し手加減しても良かったんじゃないか。それにビラッズなら最初から心臓部を狙って一撃で倒す事も出来ただろ」


「かもしれないな」


自身に倒れ込んで来たオーガを地面に下ろし、自身にクリーンを使いながら少し苦笑いしながら答えた。

その答えは私としてはビラッズらしいなと思える回答であった。


「なんとなく今日は思いっきり殴り続けたい気分だったんだよ。ただあんまりそういった事が出来ないだろ。木を相手にそれをやるのは勿体無いしよ」


確かに素手で戦う者にとっては溜まってしまう鬱憤という物か。

・・・・・・もしかしてだが、ラガス君ならその辺りを解決出来そうな気がしなくもないな。


だが彼もそろそろ学園に入学する時期だ。おそらく頭が良い筈だから学業で疲れるということは無さそうだが、それでも日常が変化した事での疲れはあるだろう。

そんな状況のラガス君に頼むというのもなぁ・・・・・・いや、しっかりと報酬を払えばやってくれるか?


とりあえず手紙を送ってみたないとわからない。

手紙を送る前にどういった報酬が良いのか決めてから送らなければな。


さて、バルンク様の方はって、なんだあれは。

狼? それとも鮫? の様な幻影が浮かんでいる。


「はっはっはっはっは!!!! なんだありゃ、マジで凄いな!!! ノエリアもそう思うだろ!!」


「そ、そうですね。あれは必殺技と言うに相応しいかと」


ノエリアの言う通りだ。


バルンク様が両足を上下に広げ、大きな咢へと変える。

そして岩魔法のアビリティを使ったのか岩の鎧を装着しており、頭も岩で覆われていたのだが無意味だと言わんばかりに上半身から頭部まで巨大な咢が噛み喰った。


頭部が完全に消え、心臓は一部物凄い勢いで血が噴き出いしている部分を見ると半分ほどは抉れたようだ。


「ふむ。確かに良い技だ」


「バルンク様、今の技に名前はあるんですか?」


「ラガス君から送られた手紙にはシャーククラフトと書かれてあった。ラガス君としてはシャークが鮫でクラフトが噛み砕くというニュアンスらしい」


鮫が噛み砕く。そのままだが、言葉の通りの威力を発揮している。

属性魔力を形状変化させ、鎧に変えるということはかなりの魔力操作が必要になる。

そして属性が岩ともなれば耐久性や防御力に特化されるのだが、それを容易に砕くとは・・・・・・とんでもない威力だな。


「この技はバイドシャークの牙を存分に生かしてくれた結果だろう。それに、この魔靴はこれで終わりでは無いからな」


「まだ何か効果があるのですか?」


「この魔靴には深風石が使われている。脚力上昇と刃の斬れ味を上げる効果、それと風の魔力は多少操れるなら更に技が使えるらしい。幸いにも私は風魔法のアビリティを習得している」


「ということは、まだ実験台を探すのでしょうか」


「そうだな、と言いたいところだが今日はこの辺りで止めておこう。このオーガを解体しないといけないしな。しかしオーガのメイン素材である角ごと噛み砕いてしまうのは失敗だったな」


今日の実験を止めても、まだ調べる性能が残っているということは、また後日実験に付き合わなければならないという事か。


「二人共、次回も付き合ってもらえるか」


「おうよ!! 任せとけ!!!」


「私も大丈夫ですよ」


二人共乗り気な表情で良かった。

さて、私達も解体に取り掛からなければ。

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