ミスは許されない

「・・・・・・頭が痛い」


「どうされましたか? そんなに手紙に衝撃的な内容が書かれてあったのですか?」


「前半は別に普通の事が書かれてあるんだが、後半がヤバい」


午前中の訓練を終え、昼食を食べ終えてから森に出かけようとした時に俺宛に手紙と荷物が届いた。

差出人はセルシア・ロウレットの親父さんからだった。


内容としては娘の我儘に付き合ってくれて有難う。学園に入学してからも仲良くしてくれ的な内容。

そこは別にいい。問題視する所では無い。


後半部分、私にも魔靴を造って欲しいという内容だ。

いや、あれだぞ。自分が造った作品を評価され、造って欲しいと言われるのは確かに嬉しい。


だが・・・・・・相手が相手だ。公爵家の当主に中途半端な物を送る事は出来ない。

自分のプライドが云々よりも、下手な物を送った場合に後でどうなるのかが怖い。


箱には俺への魔靴を造る事に対しての報酬と、魔靴の材料にしてくれと渡されたモンスターの素材や魔石。

俺の錬金術の腕を考慮してか、そこまで心臓が飛び出そうなほど高価な物は入っていないが、それでも目ん玉が飛び出そうなほど失敗出来ない素材が入っていた。


リザードマンの亜種の魔石とライトニングウルフの魔石。ミスリル鉱石、深風石にバイドシャークの牙にワイバーンの亜種の牙。


違ったな。やっぱり今の俺にとっては心臓が飛び出そうなほど高価な素材や魔石ばかりだ。

なんだよ亜種って。経験が浅いからまだ会った事は無いけど、絶対にそう簡単に出会えるモンスターじゃないだろ。

深風石だって風魔結晶より上等な物だし、サラッとミスリル鉱石まで入ってる。しかも余ったら好きに使ってくれって書いてある。

フェリスさんと同じく気前良すぎか。


それで、俺の報酬として一つの長剣と短剣の間ぐらいの両刃の剣が入っていた。

名前はアブストレント。マジックアイテムとしてのランクが七。

フェリスさんから貰った狼牙瞬雷が七だったからそれと同じなんだが・・・・・・効果が化け物だ。


効果は吸収と伸縮。伸縮を文字通り剣が伸びる。刃も柄もだ。

そして吸収。持ち主の錬度によって変わるらしいが、最初の方は単に刃で斬った相手に傷口から斬った瞬間に吸収したり、水を吸収する事が出来る。容量の限界はあるらしいが、それでも水魔法には有効かもしれないな。


錬度が上がれば他の者も吸収し、容量の限界値も上がる。吸収した物を吐き出す事も可能。

んで、更に錬度が上がれば斬りつけた相手のアビリティを吸収する事が出来る。

但しストックは五つまで。これには容量の上昇は無い。交換も可能。あと、吸収したアビリティは吸収した相手が元々習得していたアビリティレベルと同じ。

使う回数次第ではアビリティレベルが上がる事もある。


まず一言。

なんでこんな超絶凄すぎる効果を持つ魔剣を俺に送ったんだ!!??

というか、効果的にランク七では無い気がするんだが。


はぁーーーーー、こんな物を報酬として送られたらやるしかないだろ。


「ラガス坊ちゃまはこうなる運命なのかもしれませんね」


「面倒なイベントが定期的に降りかかって来るって事か? 冗談でも止めてくれ。のんびり楽しみたい俺にとっては本気で勘弁して欲しい運命だ。なんだが、とりあえず今造れる最高の作品を造らないとな」


「今日の狩りはお休みいたしますか?」


「ああ。悪いが、シュラにもそう伝えてくれ。あっ、シュラと二人で行っても良いぞ」


「そうですね・・・・・・そうさせて頂きます」


「ならこいつを使え。中に多少入ってるけど、殆ど空いてる筈だ」


二人だけでもある程度のモンスターなら倒せるだろうし。

因みにルーフェイスは現在フェリスさんの元でのんびりと過ごしている・・・・・・多分。


「有難うございます。それでは、この部屋には夕食まで誰も入らない様に伝えた方がよろしいですか?」


「そうしてくれ」


うっかりミスって素材や魔石がゴミになったら洒落にならないからな。

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