頼るのは悪い事じゃない

「あんまり頼りたくはないんだけどなぁ」


『お母さんには頼りたくないの?』


「基本的には自分の力で何とかした方が自分の為になるからな。でも、今回はおそらく自分の力ではどうしようも出来ない」


俺が望む力って、多分俺が頑張ったところで習得出来るもんじゃないんだよな。

それこそ個人の運や才能によって得られる物だし。


「私は賛成ですよ。どうにも出来ない事で立ち止まるよりは誰かに頼るべきかと。というか、私やシュラもですがラガス坊ちゃまはまだ子供なんですからもう少し大人に頼るべきです」


「確かにメリルの言う通りだと思うっす。別に大人に頼る事は恥ではないかと」


「いや、それは解ってるけどあんまり頼ってばっかりいると頼り癖みたいなのがついてしまうかもしれないからさ」


そうなるといざって時に自分の力で物事を解決出来ない。

だからなるべく自分の手で多くの物を手に入れようと思ってるんだが、流石に傲慢すぎるか?


「ラガス坊ちゃまは今まで自身の力で多くの物を手に入れて来たんです。フェリスさんとの縁も結果的にはラガス坊ちゃまの手で得た物なんですから躊躇う事は無いと私は思います」


「メリルに同意っす。今回はフェリスさんの力を借りるべきっすよ」


『お母さんもラガスからのお願いなら喜んで対応してくれると思うよ」


一人でなんでもやろうとし過ぎていたって事か。

誰かに頼る事は恥では無い。どっかで聞いた事があるようなセリフだけど、その通りかもな。



「なるほど。確かにラガス君に渡したアイテムリングには人にとって莫大な価値があるのは確かですね。それでしたら少し待っていてください」


俺の話を聞き終えたフェリスさんは何かを探すために巨大宝箱の方へ向かった。


「ありましたありました。全く使う機会が無かったのでどこに保管したのか完全に忘れていました」


フェリスさんが持って来てくれたのは一つのクリスタルだった。

多分、ただクリスタルじゃない。砕いた者がアビリティ習得出来る。そういった宝石のクリスタルとはまた違うクリスタル。


「これは収納のクリスタルです。良ければこれを使ってください」


「ッ~~~~~~~~!!!???」


声にならない声が出てしまった。

クリスタルはダンジョンの宝箱から手に入れる事が出来る。


ただ、そう簡単に手に入るものでは無い。

そしてその性能から一般的なアビリティであっても馬鹿みたいに高価だと父さんから聞いた。

最低限のアビリティからでも銀貨何十枚って話だ。


それに収納はアビリティレベルが上がれば上がる程性能が格段に上がる。

商人ならそれを持っているだけで成長率が大きく変わる。


おそらく白金貨何枚ってレベルか?

それだけの価値がある筈だ。

正直貰うのに凄い抵抗があるんだが・・・・・・本当にちょっと前に頼る事は恥では無いって解ったばかりだ。

それにここで断るのはフェリスさんに失礼か。


「あ、有難く頂きます」


「将来ハンターになるラガス君には重要なアビリティになる筈です。学生の間にバンバン使ってアビリティレベルを上げてください。あと、シュラ君とメリルさんにはこれを」


そう言うとフェリスさんはシュラの一つ、メリルに二つのクリスタルを渡した。


「シュラ君には城壁のクリスタル、メリルさんは操糸と糸生産のクリスタルです。お二人なら上手く使いこなせる筈です」


二人はまさか自分達までクリスタルを貰えると思っていなかったのか、クリスタルを受け取るてが震えていた。


にしても城壁に操糸と糸生産のクリスタルか。

フェリスさんは二人の戦い方や補いたいと思っている点を良く解ってるな。


とりあえず、家に帰ってから必要な物を収納を使って異空間に仕舞おう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る