第7話 雪解けの春

 まあなんていうかアレだ、アレだよ。


 店じまいの作業をしながら、私は彼女らのことを考えていた。


 アレってほら、わかるでしょ。アレ。


 アレ、友情通り越したサムシングですわ。


 そう思い、笑みを浮かべる。


「……なるほどね」


 私は、誰に言うでもなく呟き、深く頷いた。


 あの二人を見ると、私にもそんな時代があったことを、ふと思い出す。


 長らく連絡を取っていない、かつての友人。


 彼女の声が、聞きたくなった。


                 ○


 店を開いてからだいたい一年が経過。なんやかんやで経営はそこそこ上手くいっている。


 季節は巡り、店の前の通りには、真新しい制服を着た子供たちが、楽しそうに談笑しては歩き去る。


 そんな、春の日。


「「すいませーん」」


 聞き覚えのある声が二人分、同時に聞こえてきた。


「はいはーい」


 私はカウンターの方に向かう。


 そこには、二人の女の子がいた。


 片方は、クセのある毛を肩口あたりまで伸ばしている。左右に跳ねたその髪型は、それはそれでキュートだ。


 そしてもう一人。


 彼女は漆黒の黒髪を持っていた。肌の色は白く、艶やかな黒髪が映える。


 その黒髪を、彼女は髪留めで束ねてまとめていた。


 私も、着けたことのある髪留め。今は、あるべき場所を獲得している。


「似合うね」


 私が素直にそう言うと、二人は嬉しそうに微笑む。


 ――ああ、いいなあ。


 彼女たちを見て、しみじみと、そう思うのであった。

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髪留めの話 眼精疲労 @cebada5959

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