第5話 UFO

ぼくは、今日UFOを見た。

絶対に確かだ。


なぜなら、ぼく1人ではなく、親友の智樹も一緒だったから、見間違いなんかではない。


智樹の家で遊んで、そろそろ帰る時間だったけど別れがたく、また明日学校で会えるのは分かっているけど、まだ別れたくなくて、ぼくたちは一緒に智樹の家を歩いて出た。


ぼくたちは智樹の家とぼくの家の間にある、小さな公園で、何をするでもなく、ただ石を触ったり、草を抜いたり、していた。


5時のチャイムの音はとっくになっているのは知っていた。


「あーあ、帰んないとなー。」


鉄棒にもたれてうえを向いたとき、変な小さな光がチカチカ光っているのに気づいたのだ。


「とっ、智樹!あれ!」


智樹も上を向いた。


チカチカ光る物体は飛行機なんかじゃなかった。

だってもっと早いし、飛行機はまっすぐ飛ぶけど、その物体はいろんな方向にすごいスピードで移動している。


「あれってUFO!?」


「絶対そうだよ!!」


ぼくたちは大興奮した。

携帯にカメラが付いていれば撮影できたのに。

残念ながらぼくのショボいキッズ携帯にはカメラが付いていない。


5分ほどするとその物体は消えてしまった。


家に帰って興奮しながらお母さんにその話をすると、お母さんはにっこりしてこう言った。


「お母さんも昔見たことあるよ。

やっぱり咲也くらいの年だった。親友と2人でね。遊んだ帰りの夕方に見たんだよ。」


そうか。お母さんも見たことあるんだ。

なら絶対本物に違いない。


ぼくは、その日の宿題の日記にUFOのことを書いた。


次の日帰ってきた日記には、先生のコメントが赤でこう書かれていた。


《智樹くんと遊んで楽しかったね。5時のチャイムを聞いたら帰りましょう。》


あーあ、大人ってなんてつまんない。


ぼくは、ぼくのお母さんが、お母さんで良かったと思った。お母さんの息子だからきっとUFOが見えたんだ。

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きみょうな世界 ひまわり @hima-wari

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