第5話

佐々木「お久しぶりですね。今回もまた趣向を変えて新企画各国軍略史をやっていこうかなと思うよ。記念すべき第一回は大日本帝国陸軍だ。ゲストは魔術師二条章斗くんだ。」


章斗「宜しく。俺の世界線の歴史と君たち読者諸賢の歴史は違いが無いと思っておいてくれ。」


佐々木「大日本帝国陸軍、英語ではImperial ・Japanese・Army。その創設は1871年明治四年、薩長土の3藩から明治天皇直属の御親兵が組織された事に始まる。」


章斗「最初から大日本帝国陸軍として作られたわけじゃ無いんだな。」


佐々木「そうだね。大日本帝国陸軍と呼ばれたのは明治十年頃からだからね。そしてこの御親兵は近衛と改称される。この御親兵の力を背景に明治政府は廃藩置県を断行する。御親兵は士族を将兵の中心としていたが将来は徴兵制による国民軍への転換を図る予定であった。大村益次郎はそれを主導し、帝国陸軍の中心とみなされる。が、彼は暗殺され、元老山縣有朋公が承継。1874年1月東京鎮台にて徴兵制によって動員された兵卒が入営。」


章斗「近代軍や富国強兵政策を考えれば順当な事だな。」


佐々木「その通り。但し、士族は不満だった。征韓論の対立による西郷隆盛の下野の際多くの士族の将兵は下野。当初、は専ら国内の治安維持や下野した氏族などの叛乱鎮定を職務としていた。そして1888年、東京、仙台、名古屋、大阪、広島、熊本に設置されていた鎮台を師団へと改組、6個師団に改編された部隊は旧鎮台地を衛戍することを任務とし、近衛は近衛師団へと改変し、禁闕守護及び鳳輦供奉を主任務とした。」


章斗「やっと、耳慣れた編制が出てきたな。で具体的に師団って何なんだ?」


佐々木「その質問を待っていたね。この為に軍事的に無知な君を呼んだとも言える。」


章斗「中々失礼な。否定は出来ないが。で?」


佐々木「師団は天皇陛下直々に任命される親補職だ。恒久的、つまり常時置かれる部隊としては最大の規模だ。外地につまり日本列島の外例としては台湾・澎湖諸島などや併合された朝鮮半島などにおいて臨時に編成される軍は指揮効率上の編成単位でしかなく、帝国陸軍は天皇の直下に属する師団の集まりと言ったほうが正しく、天皇の下に大日本帝国陸軍総司令官のような職式は無かった。大元帥天皇の統帥権下にある帝国陸軍は天皇を除くと陸軍大臣、参謀総長、教育総監の3長官と呼ばれる3個の職式最高位であった。」


章斗「つまり、師団が帝国陸軍の基幹となる編制単位な訳だな?」


佐々木「その通り。この下を見給え」

師団

├歩兵団

│└歩兵連隊×3

├野砲兵連隊

│└砲兵大隊×3

│ └砲兵中隊×3(野砲×4)

├捜索連隊

│├乗馬中隊

│├乗馬中隊

│└装甲車中隊

├工兵連隊

│└工兵中隊×3

├輜重兵連隊

├師団通信部

├師団衛生部

├野生病院×3、4

├師団武器勤務隊

└防疫給水部


佐々木「第二次大戦前の一般的な帝国陸軍歩兵師団の編制だね。こう言った師団編制を三単位師団と呼ぶよ。」


章斗「歩兵師団とはいえ砲兵や戦闘員以外の部隊も有るんだな。」


佐々木「そうだね、師団は戦略単位と呼ばれるんだ。つまり師団のみで補給等の兵站や戦争をできるように組まれたものなんだ。勿論これは極論で師団一つで戦争ができるとは言っていないことは理解して欲しい。三単位とは、三個歩兵連隊を基幹として構成された師団のことだ」


章斗「成程、それで此処までが帝国陸軍の成り立ちな訳だな。」


佐々木「そうだね。1884年の台湾出兵以来普仏戦争に勝利したプロイセンから講師っを招き、機動力と独立性の高いプロイセン式軍制へと転換。この時期帝国陸軍は飛躍する。そして日清戦争だ。7個の常備師団を一挙に12個常備師団をへと増強し、さらにその後の日露戦争では満州軍が編成され戦中戦後あわせて計6個師団が常設。」


章斗「飛躍というのも頷ける。清はともかくあのロシア帝国に勝利したのだから。」


佐々木「それが微妙なんだ。日清は北洋軍閥の前身となった清の重臣李鴻章が編成した淮軍や李鴻章の指揮下の北洋艦隊など実質的には日本VS清ではなく日本VS李鴻章といった方が実際的だ。更に日露は引き分けと言っても過言では無く、両軍の陸戦戦力は壊滅状態にあったし、ロシア帝国側は平和的なデモであった非武装の一般市民のデモ行進に軍が発砲、デモ側では4000人以上、どれだけ慎重に見積もっても1000人以上が死亡した血の日曜日事件による帝政への不満など国内情勢もあり取り敢えず仲直りしようと言ったものがポーツマス条約であり両方とも完全な日本の勝利とは言えない。日露戦争唯一完全な勝利と言えるのは海軍だけ。ロシアバルチック艦隊との日本海海戦のみだ。」


章斗「…運があったとしか言い様がないな。」


佐々木「まさに、日露にしてはそう思うよ。では、今回はここまで。次回は日露以降、満州事変等から日中、太平洋戦争編です。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

佐々木学院 佐々木悠 @Itsuki515

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る