春の終わりを告げる雨

春風月葉

春の終わりを告げる雨

 青春はいつ終わるのだろう。

 ダムッ、ダムッ、頭の中では静かにバスケットボールをつく音が響いている。

 中学二年生の夏、市の大会で入賞を目前に敗退し、涙を流す先輩達の背中を見て下唇を強く噛んだ。

 来年こそは入賞をしようと努力した私の一年間の熱は翌年の夏の暑さの中に消えた。

 中学三年の市大会は予選二回戦で終わったのだった。

 僅か二試合で自分の一年間を否定されたようで悔しかった。

 そして惨めだった。

 その日は雨が降っていた。

 私は先生の話が終わると誰よりも早く体育館を出て駐輪場に置いてあった自転車に飛び乗った。

 雨具なんて身につけず、ずぶ濡れで向かったのは地元の公園に設置されたバスケットゴールだった。

 滲んだ目でゴールを狙い、濡れた手でボールを投げる。

 ボールはリングに弾かれ私の足下に転がってきた。

 中学生の私は高校でこそ結果を残すと決意した。

 そして高校三年間の間にも結果は出なかった。

 勉強などほとんどせず、バスケットボールに打ち込んでいた私は進学を選べるわけもなく、小さな企業に就職した。

 バスケットボールなど全く関係のない金属部品を製造する企業だ。

 職場の隣には私立の高校がある。

 フェンスの向こうでは誰かが青春を謳歌しているのだろう。

 私の青春はいつ終わったのだろう。

 目を閉じればいつでも、懐かしいコート上の音が聞こえる。

 シュッと空へ向けて打ったボールもないシュート、勿論その先にはゴールも無い。

 しかし私にはリングに弾かれたボールが足下に転がっているような気がしていた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

春の終わりを告げる雨 春風月葉 @HarukazeTsukiha

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る