第5話

当日。


 資料室にある女性用スーツを借り、社長の車で目的地に向かう。


 思ったより近場で、すぐに目的地へ。てっきりビジネス街や商店街に向かうものだと思っていたが、住宅街にある私のような学生が利用するような安アパートの前に到着した。


 移動中、車の中でいろいろと確認したかったのだが・・・。


 聞きたいことは浮かんでくるのだが、自分もここと大差ないアパートを利用しているので、防音なんてないようなものなのは知ってる、ここであれこれ聞くのは都合が悪い。


 てっきり経営相談だとばっかり思っていたが、勘違いしていたのかもしれない。


 予想外の状況展開に内心余裕は無い。正直、私が秘書ってのは無理がある。ただでさえ童顔だから。


 一階の角部屋が依頼主の部屋で、社長に続いて挨拶し入室。


 依頼主の第一印象は、若干細身の野球選手ぽい体格。短髪で面長、穏やかな人、でも良くも悪くも少し筋肉質な以外は目立つ特徴のない善良な一般市民といった感じの人。


 名前は青山さんといった。


 玄関も玄関から見える居間も男の一人暮らしなのによく片付いている。


 何を注目して、何を報告すればいいのかわからないが、社長的は何か気になるものがあって、私を連れてきたのだろう・・・何を期待されているのだろうか。いまさらプレッシャーの様なものを感じる。


 玄関には普段履きだろう普通の白いスニーカーがある、横に普段は使わないだろう、底の厚いごつごつとした大きめの靴が二足並んでいた。


 スキーのストックもある。冬でもないのに出しっぱなしなのか。


 何度か来てるだろう社長と、青山さんは天気がいいとか話しながら、居間にに向かって進んでいく。それに遅れてついていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

株式会社 山田 Dogs Fighter @cycle20xx

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ