サブリン号事件
るーといち
第1話 はじまりはじまり
昔々、お爺さんとお婆さんが住んでいました。お爺さんは山へ芝刈りに......
確か昔、日本という国にそんな感じで始まるお伽話があった気がする
「ジン、準備はできたか?今回の船旅は100 0で死ぬぞ。ちゃんとお別れしとけ。」
「ん?いや、人生はいつも50 50、生きるか死ぬかどっちだろうな」
「あ?カッコつけてんじゃねーぞー お前も今度どこ行くか知ってるだろ」
「あぁ、北極だろ 楽しそうじゃん」
「はあぁ」ヲッカは少し馬鹿にするような感じでため息をつく
「全く頭んなかお花畑連中は気楽でいいねぇ うちの船長も行く気満々じゃねぇか」
「おーい、お前ら 明日出発だ 今晩早く寝ろよ」
「うぃーっす 船長 また明日」
「たった6人しかいねぇのにな わざわざ死ににいくのかぁ」ヲッカは呟いた
翌朝
うう....朝日が眩しい 部屋にはもうヲッカはいない
あいつ、やるときはやるやつだしなぁ
そろそろ起きるか
「おや おはよう」
「おはよう 女将さん」階下に行くと女将さんが朝食を作ってくれていた
「北極に行くんだってぇ?すごいじゃない」
「ええ、まぁ」女将さんと話すと心が軽くなる
「大変でしょう これ持っていき」
大の大人が5日は持つような食料をくれた
「いいのか こんなに」
「いいんだよ」お女将さんは少し辛いような瞳で私を見た
カーンカーン
ベルがなる 船出の合図だ
「それじゃあ、行ってくるよ」
「あぁ、行ってらっしゃい」女将さんの思いつめている瞳を気にしながら
私は宿を出た
「おはようございまーす 船長」
「あぁジンおはよう お前はきたのか」
ん?お前は?嫌な予感がする
「船長、単刀直入に聞きます。北極へは何人で行くのですか?」
しばらく沈黙があった
「4人.....4人だ」
「誰が逃げたんですか?」 もちろん一人は予測がついている
「ヲッカと給仕係が一人」
「そうですか」
「これで良かったのかい?」女将さんがヲッカに聞いた
「あぁ 俺は自分から死ににいく馬鹿じゃないからな」
船を見送りながらの2人の言葉だった
「今夜はあらしかなぁ」甲板で船長とはなす
「あぁそのようだな 風がおかしい」
「船の底に穴あかないか不安ですね」
一番下は食料庫 つまり船の底に穴が開くと食物はなくなる 船旅ができない
その前に遭難してしまう........... 詰みだ そうなっては何もできない
朝のことがあってかあってか僅かな不安がある
翌日
嫌な予感が大的中 嵐は耐えきれるものなんかではなく案の定食料はなくなり遭難中
「最悪だ」もちろん飲水はない 船は沈み救助ボートの上だ
時代が時代なら
船沈んだw救助ボートなう つみ卍
みたいに投稿することしかできない状況だ
ボートといってもたいそうな物ではなくただの筏だ
幸い釣りはできる
栄養は偏ってしまうが生きるためには仕方ない 女将さんがくれた食料もある
生きるのに必死だった
3日4日と過ぎた
飲水は海水をなんとかして真水に変えていた
ただ明らかに栄養失調だ
筏の上には 船長 給仕 親友のリン そして自分
この中でたった1人自分の犠牲とともに助けることができるなら誰を助けるだろう
そんな妄想をすることも多くなった あぁ意識が薄らいでゆく
「駄目だ もう我慢できない」給仕が叫んだ声で私はハッとした
あぶないあぶない....
それよりも給仕はいったいどうしたんだろう?
給仕をみると海水を飲んでいた
マズい!
咄嗟にそう思った
海水を飲むと血液の塩分濃度が上がり、結果的に高血圧になって余計にしんどくなる
あぁ あいつはもう助からない
そうおもっていると、船長がふらふらでありながらも立ち上がった。
もう、釣りをする力もないはずだ
何をするのだろう
小さな声で「仕方ない あいつはもう助からない」と繰り返し呟いている
そして給仕の前に立った
そして残っているすべての力を使うようにしてナイフを取り出し....
目の前が一瞬真っ赤に染まった
そしてその状況に久しぶりの食料だと喜んだ自分がいた気がする
船長はまるで魚を捌くかのように給仕の服を脱がせ腹を裂いた
血液が喉を潤わせる
あぁ、ニクが美味しそうだ
切った腹からは内臓も飛び出ていた それら全てがご馳走のように見えた
リンが石でつぶした頭からでた脳みそを貪り食っている
船長は足の片方を切断し口周りを赤黒い血で汚しながらふくらはぎ辺りを食べている
俺も...俺も食わなくちゃ
顔はもうリンが食べていた
舌を裂き目玉を穿り出し唇も頬もなかった
手足は船長が食べている
お腹...お腹を食べよう 目の前の胃や小腸、少しの脂肪というご馳走に
一心不乱に齧り付いた
筏から漏れた赤黒い血が鮫を呼ぶ
食べれないところは鮫に処分してもらおう
置いていても蛆が湧くだけだ
次は誰を食べるのだろう
サブリン号事件 るーといち @ru-----to1
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